2024/2025年度短期経済見通し(2024年9月)(2次QE反映後)~景気は緩やかな持ち直しが続く~

2024/09/10 調査部
日本経済短期見通し
GDP
国内マクロ経済

9月9日発表の2024年4~6月期の実質GDP成長率(2次速報)は、前期比+0.7%・年率換算+2.9%と1次速報の同+0.8%・+3.1%から下方修正されたが、修正幅はわずかであり、堅調な結果であることに変わりはない。内需が5四半期ぶりにプラスに転じており、それまで足踏み状態にあった景気は緩やかな持ち直しに転じたと判断される。中でも個人消費は、認証不正で停止していた自動車の生産再開によって販売が急増した効果もあって5四半期ぶりにプラスとなり、プラス幅も同+0.9%(+1.0%を下方修正)と大きめとなった。

今後も景気の持ち直しの動きが維持されるためには、個人消費の回復が続くかどうかによるところが大きい。個人消費を取り巻く環境は、春闘の賃上げ率の高い伸びが徐々に賃金に浸透しつつあることに加え、夏のボーナス支給額が堅調に増加し、定額減税の実施によって可処分所得が増加するなど、良好な状態にある。これに対し、足元では、物価高への懸念、株安・南海トラフ地震への警戒感、酷暑・大雨といった天候不順によって支出が抑制されるリスクがあるうえ、コロナ禍明け後のサービス支出の回復が一巡しており、個人消費は7~9月期に伸びが大幅に鈍化する可能性がある。

それでも、賃金の上昇が続き、物価上昇圧力が徐々に鎮静化することから、消費者マインドも持ち直し、個人消費が減少に転じることは回避されよう。年末にかけては、実質賃金の前年比プラスが定着すると見込まれる。また、好業績や人手不足を背景に企業の設備投資意欲が強く、設備投資による景気下支え効果が期待される。インバウンド需要の増加が続くこと、自動車の生産が徐々に回復すること、世界的な半導体需要が底打ちしていることなども景気にとってプラス材料となる。

2024年度の実質GDP成長率は前年比+0.6%と4年連続でのプラス成長を見込む。2023年度の同+0.8%から伸び率は縮小するが、マイナスの成長率のゲタ(-0.7%)によって見かけ上の伸び率が低いためで、それを除けば+1.3%と底堅い伸びである。一方、人件費や物流コストの増加などによって物価上昇圧力が強い状態が続けば、消費支出が抑制される懸念があるほか、米国および中国など海外経済の減速、人手不足による供給制約といったマイナス材料が強まれば景気の持ち直しの勢いが弱まり、失速に至るリスクが出てくる。

2025年度は前年比+1.3%とプラス成長が続こう。引き続き春闘での賃上げ率の大きさ、それを受けての個人消費の動向が景気の先行きを左右するポイントとなる。人手不足の状態と企業業績の改善が続く中で、前年を下回るとはいえ、好調な企業業績と深刻な人手不足を背景に2025年も高めの賃上げ率が見込まれるうえ、輸入物価の上昇圧力が一巡する中で国内の物価上昇率も鈍化すると予想され、内需を中心に景気回復が続くであろう。

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