2024/2025年度短期経済見通し(2024年12月)(2次QE反映後)~下振れリスクを伴いつつも、景気は緩やかな持ち直しが続く~

2024/12/10 調査部
日本経済短期見通し
GDP
国内マクロ経済

12月9日発表の2024年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報)は、前期比+0.3%(年率換算+1.2%)と1次速報の前期比+0.2%(年率換算+0.9%)から上方修正されたが、小幅であり、景気は緩やかな持ち直しを続けているとの判断に変更はない。個人消費が下方修正されたが(前期比+0.9%から+0.7%)、所得の堅調な増加、自動車の販売増、備蓄需要の高まりなどにより順調に増加している姿に変わりはない。

10~12月期もプラス成長が続こうが、高い伸びは期待できない。7~9月期に個人消費を押し上げた一時的要因が剥落するうえ、物価高への懸念やコロナ禍明け後のサービス支出の回復一巡により、個人消費の伸びは大きく鈍化するであろう。それでも、春闘の高い賃上げ率が賃金に浸透しているほか、10月から最低賃金が引き上げられたことや、冬のボーナス支給額が堅調に増加すると期待されることなど、個人消費を取り巻く環境は良好な状態にある。このため、物価上昇圧力が徐々に落ち着いてくることもあって消費者マインドも徐々に持ち直し、個人消費の減少をきっかけに景気が悪化に転じることは回避されよう。また、好業績や人手不足を背景に企業の設備投資意欲は強く、設備投資による景気下支え効果が期待される。インバウンド需要の増加が続くこと、世界的な半導体需要の回復なども景気にとってプラス材料となる。一方、政府の新たな経済対策(国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策)による押し上げ効果は、限定的であるとみている。

2024年度の実質GDP成長率は前年比+0.4%と4年連続でのプラス成長を見込む。2023年度の同+0.7%から伸び率は一段と縮小するが、マイナスの成長率のゲタ(-0.6%)によって見かけ上の伸び率が低いためで、それを除けば+1.1%と底堅い伸びである。一方、人件費や物流コストの増加などによって物価上昇圧力が強い状態が続けば、消費支出が抑制される懸念があるほか、米国および中国など海外経済の減速、人手不足による供給制約といったマイナス材料が強まれば景気の持ち直しの勢いが弱まり、失速に至るリスクが出てくる。

2025年度は前年比+1.2%とプラス成長が続こう。引き続き春闘での賃上げ率の大きさ、それを受けての個人消費の動向が景気の先行きを左右するポイントとなる。前年を下回るとはいえ、好調な企業業績と深刻な人手不足を背景に2025年春闘でも高めの賃上げ率が見込まれるうえ、輸入物価の上昇圧力が一巡する中で国内の物価上昇率は鈍化すると予想され、内需を中心に景気回復が続くであろう。ただし、米国のトランプ次期大統領による通商政策の行方、米中の貿易摩擦が再燃する懸念、地政学リスクの高まりなど、2025年入り後は景気に対する不確定要素が多く、これらが下振れ方向に寄与することで景気失速の懸念が高まるリスクがある。海外経済が減速し、輸出が落ち込むなどのマイナス要因が拡大すれば、国内景気に大きなダメージを及ぼすであろう。

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