入口から見た量的緩和政策の出口論

2004/08/04
総研調査
  1. 景気回復に力強さが増し、物価が下げ止まるにつれて量的緩和政策の解除が近いとの見方が高まり、いわゆる「出口論」が盛んになっている。しかし、量的緩和政策の目的は何だったのかという入口の評価も実は十分になされていない。そこで、錯綜する出口の議論を整理するため、入口に遡って量的緩和の目的を再検討した。
  2. 量的緩和政策には、デフレの解消、金融システムの安定、長期金利低下という3つの期待があった。このうち金融システム安定化への貢献はかなり大きかったと考えられるが、金利低下は銀行貸出増加にはつながっておらず、デフレの解消に役立ったとはいえない。また、国債買い切りの増額は長期金利を低下させ、国債費を抑制する効果があったが、これはそもそも金融政策が目指すものではない。
  3. 量的緩和政策はデフレ脱却を目指す政策とされているが、実はデフレだから可能になった政策である。景気が回復し、物価が上昇に転じ、さらに資金需要が出てきたときに、量的緩和を続けていては再びバブル経済に戻ってしまう。日本経済がデフレからインフレに戻れば、金融政策も金融市場調節における操作目標を再び金利に戻すべきである。
  4. 量的緩和政策の解除とは、操作目標を日銀当座預金残高から金利に戻すことであり、それ自体は引き締めではない。量的緩和解除後は、景気動向も見ながら、短期金利の水準はゼロ金利から徐々に引き上げられることになり、日銀当座預金残高は短期金利誘導のオペの結果として受動的に減少していく。また、国債買い切りオペは現金需要の増加に見合った額まで減額される。
  5. 量的緩和政策は、消費者物価、資金需要を含めた景気動向、金融システム不安の後退などを確認しながら解除される。足元の景気回復の勢いが続けば2005年度に解除の可能性が出てくるが、2004年度後半に景気が調整局面に入る可能性があり、解除は2006年度以降になろう。財政政策との関係が最後まで残る問題となるが、国債費の抑制のために量的緩和政策を継続するという選択はすべきではない。
  6. 量的緩和政策解除のために物価基準を厳しくすることは、金融政策の透明性を高めるかもしれないが、機動性は著しく損なわれる。量的緩和政策をいつ解除したらよいか、最終的には中央銀行の賢明な総合判断にゆだねる勇気も必要であろう。

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