~外貨準備の拡大と世界経済への影響~
- 世界の通貨当局が保有する外貨準備は、2002年以降のドル安などを背景に急速に拡大。2004年6月末時点で3兆4,920億ドルと過去最高水準を更新している。地域別にみると、特にわが国や中国などアジアの外貨準備の拡大が顕著である。こうした外貨準備の多くはドルで運用されている。米国のFRBのマネタリーベースと、米国以外の通貨当局が保有する米国債・政府機関債の残高を合計した世界の「ドル流動性」は2002年以降、急増している。その結果、通貨当局が保有するドル流動性の増減が米国の金融市場に与える影響力も大きくなっていると考えられる。
- 世界のドル流動性が増加した要因として、(1)米国で2001年以降、ITバブル崩壊やテロ発生といったショックを受け、景気刺激のために大規模な金融緩和が実施されたこと、(2)わが国を中心とするアジア諸国において、米国の金融緩和に伴うドル安・円高圧力を緩和するために大量のドル買い介入が実施されたこと、などがあげられる。
- こうしたドル流動性の増加は、米国の長期金利を低下させることを通じて、(1)経常収支赤字の拡大、(2)原油価格の上昇、(3)住宅資産価格の上昇など、米国経済に大きな影響をもたらしていると考えられる。
- そこで、わが国の外貨準備の拡大が米国経済に与える影響を試算した。試算によると、わが国の外貨準備の拡大テンポが加速すると、米国のマネーサプライや住宅価格の上昇などを通じて、米国のGDP成長率が押し上げられることがわかった。今後、仮に2003年度規模のドル買い介入が実施された場合には、介入がない場合に比べて、米国の実質GDP成長率を1~2年に渡って0.3~0.6%ポイント押し上げる可能性がある。
- ただし、外貨準備の一段の拡大は、米国の経常収支赤字の拡大や原油価格の高騰など、世界経済の不安定化を助長する恐れがある。通貨当局によるドル買い介入は、短期的にはドル急落を防ぐ効果がある。しかし、過度の介入は、米国の経常収支の赤字拡大を助長することを通じて、中長期的にはドル安圧力を高める可能性もある点に留意する必要があろう。
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