- 2001年3月に量的緩和政策が導入されてから4年以上がすでに経過している。量的緩和政策は、円滑な金融システムの確保を図る信用秩序維持政策と、物価の安定と経済の発展を実現するための金融政策という二つの顔を持っている。このうち、信用秩序維持政策としての量的緩和政策は、日銀当座預金残高を拡大させて金融機関の資金繰りを容易にすることによって、金融システム不安の回避に寄与した。また、金融政策としては、量的緩和の結果としてゼロ水準の短期金利が実現したため、時間軸効果による長期金利の低下を伴いながら、資金需要の喚起にある程度の効果を発揮したと考えられる。
- しかし、量的緩和政策を取り巻く環境は変化しており、金融システム不安が解消してきている。金融機関が抱えていた不良債権の処理が進捗し、先送りが続いていたペイオフの全面解禁もようやく実現している。信用秩序維持政策の面からは、量的緩和政策を続ける意義が薄れてきていると言えよう。
- 量的緩和政策によって日銀当座預金残高を拡大させても、景気や物価動向にあまり影響しなかったようである。しかし、名目金利をゼロ水準に張り付かせるということは、実質金利を可能な限り低く抑えることを意味する。能動的に金利を低下させる余地は限られていても、物価動向に影響されて実質金利の低下が可能になった。こうして、受動的ながらも金融緩和の効果が高まり、借入需要にもプラスの効果があったと推察される。
- 量的緩和政策の効果が、日銀当座預金残高の拡大ではなく、ゼロ金利によってもたらされているならば、量的緩和政策の解除や日銀当座預金残高目標の引き下げについて議論することはあまり意味がない。消費者物価の動向にかかわらず、まず量的緩和政策からゼロ金利政策に移行することが重要であろう。このシフトは、金融調節の操作目標の変更(日銀当座預金残高→無担保コールレート)に過ぎないので、金融政策の効果は今までと変わらない。
- 政策金利の誘導目標は当面ゼロ近辺に設定されることになるが、その後は、消費者物価を含めた複数の物価指標、そこから導かれる実質金利のレベル、さらには借入需要の動向を勘案しながら、金利水準が決定されることになろう。
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