ASEAN-5とインドの経済動向(2020年4~6月期)~コロナ・ショックによる景気悪化がボトムアウトするASEAN-5~
○ASEAN-5(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム)の経済は、2020年3月から本格化したコロナ・ショックによって大打撃を受け、2020年4~6月期の経済成長率は大きく落ち込んだ。コロナウィルス対策として隔離措置や行動制限などが実施されたことにより、個人消費、設備投資、輸出などが、大幅に押し下げられた。
○ASEAN-5の経済成長率は足元で大きく落ち込んでいるものの、消費、生産、輸出などの各種月次データを見ると、指標の悪化傾向が4~5月頃にボトムアウトし、その後、回復に向かっていることが読み取れる。すなわち、景気は4~6月期に底を打ち、7~9月期以降は回復に向かうことが予想される。
○コロナウィルス感染状況を見ると、ASEAN-5の中で二極化しており、タイ、マレーシア、ベトナムは、感染拡大を初期段階で封じ込めたが、フィリピンとインドネシアは感染者数増加傾向が続いている。ただ、人口比で見たコロナウィルス感染者数は、ASEAN-5が世界の新興国の中でも際立って少ない。
○タイの2020年4~6月期の経済成長率は、前年同期比▲12.2%と大幅に落ち込んだ。特に大きく減少したのは、サービス輸出であった。コロナ禍に伴う外国人入国禁止により観光収入が激減したため、サービス輸出は前年同期比で7割も減少したと見られている。
○マレーシアの2020年4~6月期の経済成長率は前年同期比▲17.1%となった。コロナウィルス感染防止策としての移動制限令により、個人消費、投資、輸出が、すべてマイナスの伸びとなった。また、産業別に見ると、飲食関連や輸送関連で、落ち込み率が▲40%以上となった業種もあった。
○フィリピンの2020年4~6月期の経済成長率は前年同期比▲16.5%となった。3月中旬から5月末まで続いた外出禁止令や隔離措置によって、国内企業のうち、2/3の企業が収入ゼロとなり、6割の企業が操業を停止、1/4の企業が解雇を実施するなど、フィリピン経済は大きな痛手を受けた。
○インドネシアの2020年4~6月期の経済成長率は前年同期比▲5.3%と、アジア通貨危機直後の1999年1~3月期以来、21年ぶりのマイナス成長となった。コロナウィルス感染防止策として大規模な社会規制が実施され、オフィスや工場の閉鎖、外出制限などが行われた影響で、個人消費、投資、輸出が、軒並みマイナスの伸びとなった。
○ベトナムの2020年4~6月期の経済成長率は前年同期比0.4%と、1~3月期から大幅に鈍化したものの、僅かながらもプラスを維持した。周辺ASEAN諸国では、4~6月期の経済成長率が軒並みマイナスであり、また、中国でさえ、4~6月期はプラスに回復したが、1~3月期は大幅なマイナス成長だった。近隣諸国がこうした状況にある中、ベトナム経済の底堅さは際立っていると言える。
○インドの2020年4~6月期の経済成長率は、前年同期比▲23.9%と大幅なマイナス成長に陥った。インドの経済成長率がマイナス転落したのは、第2次オイルショック翌年(1980年度)以来、40年ぶりである。コロナウィルス感染拡大抑止のため全土で実施したロックダウンにより、初期段階での感染拡大は抑え込まれたが、個人消費などが大きく落ち込んでしまった。しかも、ロックダウン解除後に感染拡大が止まらなくなり、一日当たりの新規感染者数は、足元で、インドが、米国やブラジルを抜き、世界一である。
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