○ インドの2020年7~9月期(2020年度第2四半期)の経済成長率は、前年同期比▲5%となった。大幅なマイナス成長ではあるが、4~6月期(▲23.9%)よりも著しく改善しており、景気は4~6月期に底を打って回復軌道に入っていることを示す結果となった。
○ 2020年3月25日から5月31日までインド全土で実施されたロックダウンによって、政府や企業の活動がほぼ機能麻痺状態に陥り、4~6月期の経済成長率は大幅に落ち込んだが、7~9月期は、行動規制が緩和され経済活動が正常化に向かったことを反映し、個人消費や投資が回復した。
○ 2019年後半から、農産物の不作と原油価格の上昇により、インフレが加速した。その中で、コロナ禍が発生したため、中銀は、2020年3月に75bpsの利下げを実施、同年5月にも40bpsの利下げを実施し、景気の下支えを図った。
目標を超えるインフレ率が続く中、中銀は、本来の使命であるインフレのコントロールを中断し、景気回復支援のため利下げを余儀なくされるという苦境に陥っている。
○ 乗用車販売台数は6月以降持ち直しつつあり、6月の伸び率は前年同月比▲56%となったが、7月は▲19%、8月にはプラスに転じ、9月と10月は40%近い伸び率となり、大幅な拡大傾向が続いている。これは、ロックダウン期間中に鬱屈状態にあった需要(ペントアップ・デマンド)が一気に表出したためと見られ、あらためてインドの個人消費需要の旺盛さを示すものとなった。
○ インドにおけるコロナウィルス新規感染者数は、9月をピークに減少傾向が続いている。1日当たりの新規感染者数は、9月のピーク時には10万人に迫っていたが、12月上旬には3万人台まで減少している。感染拡大の勢いがこのまま鈍化し続ければ、景気回復傾向の持続が期待できる。
しかし、もしも第2波の感染拡大が発生した場合には、再び経済活動が停滞する可能性もあることには注意が必要だろう。
○ インド全土で実施されたロックダウンのため、工業施設の大半が操業を停止したことから、工業生産指数は、4月には前年同月比▲3%という著しく大きな落ち込みとなった。しかし、5月末でロックダウンは終了、工業施設の活動が順次再開されたことを受け、5月以降は急回復している。
7月には、大部分の工業施設で生産活動が再開されており、工業生産指数の伸び率は▲10.8%まで回復した。
○ インド経済が、慢性的な財政赤字・経常赤字という「基礎疾患」を抱えているにも拘わらず、通貨ルピーの為替相場は四大新興国BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)のなかでも比較的安定している。
インドには、巨大な人口と経済成長ポテンシャルの高さに魅かれて世界中から資金が流入、資本流入超過が経常赤字をオフセットするパターンが定着している。これによってもたらされる国際収支面でのソルベンシー・リスクの低さを背景に、ルピーの相場が安定的に維持されていると言えるだろう。
○ インドの株価は、コロナ禍による大きな被害を受けたロシアやブラジルと同様、2020年3月に急落した。しかし、その後、インドの株価は、ロシアやブラジルを上回る勢いで急速に回復しており、11月には過去最高値を記録するほどまで上昇した。これは、インドの今後の経済成長に対する投資家の期待感が非常に高いことに裏付けられたものと言えよう。
ポスト・コロナの株式市場では、BRICsの中で、インドの独り勝ち状態が続きそうな気配である。
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