ASEAN-5の経済動向(2020年10~12月期)~景気回復傾向続くも、ベトナム以外の4カ国は依然マイナス成長~
2021/03/04 堀江 正人
アジア景気概況
海外マクロ経済
- ASEAN-5(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム)の経済は、2020年3月から深刻化したコロナ・ショックの影響で、2020年4~6月期に成長率が大きく落ち込んだ。しかし、その後の景気は回復に転じ、7~9月期に続いて10~12月期も概ね回復傾向を維持した。
- ASEAN-5のうち、10~12月期の前年同期比経済成長率がプラスだったのはベトナムだけである。タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアは、7~9月期に続いて10~12月期も経済成長率はマイナスであり、SNAベースの経済活動規模がコロナ・ショック以前の水準よりも低い状態が続いている。しかし、各国の消費、生産、輸出などの月次データを見ると、指標の悪化傾向が4~5月にボトムアウトした後は、ずっと改善を続けており、景気回復の基調は確かなものとなっている。
- コロナウィルス感染状況は、ASEAN-5の中で二極化している。タイ、ベトナムは、感染拡大を初期段階で封じ込めるのに成功した。一方、マレーシアは感染を当初封じ込めたが昨年秋に感染者数が増加、フィリピンでも感染者数が一時大きく増加し、インドネシアでは感染者数の増加傾向が長期間続いた。
- タイの2020年10~12月期の経済成長率は、前年同期比▲4.2%となり、7~9月期(▲6.4%)よりも改善した。個人消費は、僅かながらもプラス成長となり、投資も、公共投資などの効果で、持ち直しつつある。一方、輸出は、依然として大幅なマイナス成長である。コロナ禍に伴う外国人入国禁止で観光収入が途絶したためサービス輸出が激減したことが響いた。
- マレーシアの2020年10~12月期の経済成長率は前年同期比▲3.4%となり、7~9月期(▲2.8%)よりも若干悪化した。これは、政府が、抑え込んだはずのコロナウィルス感染が増加に転じたことを受けて昨年10月に移動制限令を発令したため、経済活動に影響が出たものと見られる。
- フィリピンの2020年10~12月期の経済成長率は前年同期比▲8.3%と、7~9月期(▲11.4%)よりも改善し、景気が4~6月期に底を打ってから回復傾向を持続していることが示された。ただし、成長率は、依然として大きなマイナスで、個人消費、投資(固定資本形成)、輸出が軒並みマイナスという厳しい状況であり、V字型回復には程遠い状況であることも明らかとなった。
- インドネシアの2020年10~12月期の経済成長率は前年同期比▲2.2%と、7~9月期(▲3.5%)よりも改善した。しかし、コロナウィルス感染拡大の動きが未だに沈静化していないこともあって、政府が移動・行動制限を再導入せざるを得なくなるなど、依然として、コロナ・ショックがインドネシア経済への重しとなっている状況が続いている。
- ベトナムの2020年10~12月期の経済成長率は前年同期比4.5%と、7~9月期(2.7%)よりも加速した。足元で景気が堅調な中国でさえ、2020年1~3月期には経済成長率が大幅マイナスであったことを考慮すれば、コロナ禍の中でも2020年に入ってから4四半期連続でプラス成長を維持したベトナム経済は、その底堅さが近隣諸国に比べて際立っている。
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