- インドの2020年10~12月期(2020年度第3四半期)の経済成長率は、前年同期比0.4%となり、3四半期ぶりにプラス成長に回復した。10~12月期は、タイやインドネシアなどでは経済成長率がマイナスであり、これと比べれば、インド経済はV字型回復を遂げたと言ってよく、成長力の強さが示された。
- 2020年3月25日から5月31日までインド全土で実施されたロックダウンによって、政府や企業の活動がほぼ機能麻痺状態に陥り、4~6月期の経済成長率は大幅に落ち込んだが、7~9月期以降は、行動規制が緩和され経済活動が正常化に向かったことを反映し、景気が回復した。
- コロナ禍の発生を受け、中銀は、2020年3月と5月に利下げを実施し景気の下支えを図ったが、インフレ率が上昇し政策金利を超えるという中銀にとって苦しい状態が続いた。しかし、2021年1月にはインフレ率が4.1%まで下がり、政策金利をインフレ率が大幅に上回る状態は解消された。
- 乗用車販売は6月以降持ち直し、2020年6月の伸び率は▲56%だったが、8月にはプラスに転じ、9月は20%を超える伸び率となり、10月以降も前年同月比プラス成長が続いている。これは、ロックダウン期間中のペントアップ・デマンドが一気に表出したためと見られる。
- インドにおけるコロナウィルス新規感染者数は、2020年9月をピークに減少に向かい、足元では横這い状態だが増加に転じる兆しもうかがえる。インドでは、2021年3月1日から高齢者へのコロナウィルスのワクチン接種が開始されており、ワクチン投与の効果でコロナウィルス感染がこのまま収束に向かえば、経済活動の正常化と景気回復が期待できるが、第2波の感染拡大発生の可能性には要注意である。
- インドの産業の中で、コロナ禍のなかでも堅調な業績を示したのがITソフトウェア業界である。インドは、財(モノ)の輸出は振るわないが、ITをベースとする各種サービスの輸出は成長著しく、それによるサービス収支黒字が貿易収支赤字をある程度オフセットすることでインドの経常赤字拡大を食い止めるのに重要な役割を果たしている。
- 工業生産指数は、インド全土で実施されたロックダウンのため、2020年4月には前年同月比▲57.3%という大幅な落ち込みとなったが、ロックダウンが終了後は急回復し、9月にはプラス(1.0%)となった。その後の伸びは一進一退であるが、生産活動は、コロナ以前の水準まで短期間で戻ったと言えるだろう。
- インド経済が、慢性的な財政赤字・経常赤字という「基礎疾患」を抱えているにも拘わらず、為替相場はルピー高傾向が目立っている。インドには、巨大な市場の成長ポテンシャルに魅かれて世界中から資金が流入、資本流入超過が経常赤字をオフセットするパターンが定着、これによってもたらされる国際収支面でのソルベンシー・リスクの低さを背景に、ルピーの相場が増価していると言えるだろう。
- インドの株価は、コロナ禍による大きな被害を受けたロシアやブラジルと同様、2020年3月に急落した。しかし、その後、インドの株価は、ロシアやブラジルを上回る勢いで急速に回復しており、2020年11月には過去最高値を記録するほどまで上昇し、その後も最高値を更新している。これは、インドの今後の経済成長に対する投資家の期待感が非常に高いことに裏付けられたものと言えよう。ポスト・コロナの新興国株式市場の中で、インドの独り勝ち状態が続きそうな気配である。
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