ASEAN-5の経済動向(2021年1~3月期)~コロナ・ウィルス感染再拡大で、回復してきた景気の先行きに不透明感

2021/06/10 堀江 正人
アジア景気概況
海外マクロ経済
  • ASEAN-5(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム)の景気は、コロナ・ショックのために、2020年4~6月期に大きく落ち込んだが、その後回復に転じ、2020年7~9月期と10~12月期に続いて、2021年1~3月期も回復傾向を維持した。
  • ASEAN-5のうち、2021年1~3月期の前年同期比経済成長率がプラスだったのはベトナムだけであり、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアは、いまだにマイナス成長である。ただ、各国の消費、生産、輸出などの月次データを見ると、指標の悪化傾向が2020年4~5月にボトムアウトした後は、ずっと改善を続けており、景気回復の基調は維持されている。
  • ASEAN-5のコロナ・ウィルス感染状況は、新たな局面を迎えており、これまで感染拡大を封じ込めてきた国々で感染者数が急増している。タイ、ベトナム、マレーシアで、今年4月以降感染者数が急増、マレーシアでは6月前半にロックダウンを余儀なくされた。こうした感染拡大が、今年4~6月期の経済成長率を下押しし、今後の景気回復を遅らせるとの懸念が浮上している。
  • タイの2021年1~3月期の経済成長率は前年同期比▲2.6%となり、2020年10~12月期(▲4.2%)よりも改善した。個人消費は、僅かにマイナス成長となったが、投資は、民間設備投資の盛り返しに後押しされてプラス成長となった。一方、輸出は、依然として大幅なマイナス成長である。コロナ禍に伴う外国人入国制限によりサービス輸出(観光収入)が大幅減少したことが響いている。
  • マレーシアの2021年1~3月期の経済成長率は前年同期比▲0.5%となり、2020年10~12月期(▲3.4%)よりも改善した。輸出の拡大が景気回復を支えている。しかし、今年4月以降、コロナ・ウィルス感染拡大の第2波が発生し、6月前半にはロックダウンに追い込まれた。これが、4~6月期以降の景気に与える影響が懸念されている。
  • フィリピンの2021年1~3月期の経済成長率は前年同期比▲4.2%と、2020年10~12月期(▲8.3%)よりも改善し、景気が昨年4~6月期に底を打ってから回復傾向を持続していることが示された。ただし、成長率は、依然としてマイナスで、個人消費、投資、輸出が軒並みマイナスという厳しい状況である。また、今年3月以降のコロナ・ウィルス感染拡大が今後の景気に及ぼす影響が懸念されている。
  • インドネシアの2021年1~3月期の経済成長率は前年同期比▲0.7%と、2020年10~12月期(▲2.2%)よりも改善した。しかし、景気拡大の牽引役である個人消費がいまだにマイナス成長であり、投資も若干ながらマイナス成長である。コロナ・ウィルス感染については、今年3月以降、新規感染者数がほぼ横這いであるが沈静化には至っておらず、依然として、景気回復への重しとなっている。
  • ベトナムの2021年1~3月期の経済成長率は前年同期比4.5%と、2020年10~12月期(4.5%)と同じ伸び率であった。ベトナム経済は、コロナ・ショック発生以降も、5四半期連続でプラス成長を維持しており、その底堅さは近隣諸国に比べて際立っていた。ただ、今年4月下旬以降、コロナ・ウィルスの感染が拡大しており、これが4~6月期の景気に及ぼす影響が懸念されている。

続きは全文紹介をご覧ください。

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。