- ASEAN-5(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム)の景気は、コロナ禍発生直後の2020年4~6月期に大きく落ち込んだが、その後回復に転じ、2020年7~9月期と10~12月期、2021年1~3月期に続いて、2021年4~6月期も回復傾向を維持した。
- ASEAN-5のうち、2021年1~3月期の前年同期比経済成長率がプラスだったのはベトナムだけだった。しかし、2021年4~6月期は、5カ国すべてがプラス成長を記録し、また、伸び率が前期よりも大幅に加速した。ただし、今期の高い成長率は、コロナショックで大幅に落ち込んだ前年同期と比較されることで、見かけ上、伸び率が高くなるというテクニカルな要因に影響されている。
- ASEAN-5のコロナウィルス感染状況は、感染力が強い変異種デルタ株の出現によって新たな局面を迎えた。これまで感染拡大を封じ込めてきた国々で感染者数が大幅に増加し、タイ、ベトナム、マレーシアの3カ国で今年4月以降感染者数が急増、マレーシアでは6月にロックダウンを余儀なくされるなど、今後の景気回復が遅れかねない状況に陥っている。
- タイの2021年4~6月期の経済成長率は前年同期比7.5%となり、6四半期ぶりのプラス成長となった。個人消費がプラス成長に転じ、民間設備投資の盛り上がりによって投資の伸びも加速した。一方、輸出も、自動車関連を中心に好調で、大幅なプラス成長となった。ただ、政府は、コロナウィルス変異種デルタ株の影響で経済活動が押し下げられると見て、2021年の成長率予測を下方修正している。
- マレーシアの2021年4~6月期の経済成長率は前年同期比16.1%となり、5四半期ぶりのプラス成長を記録した。今までマイナス成長だった個人消費と投資が今期はプラス成長に転じ、また、輸出も大きく伸び、内外需ともに好調だったことで景気が押し上げられた。ただ、コロナウィルス変異種デルタ株による感染被害拡大によって、景気が大きく下振れするとの懸念が広まっている。
- フィリピンの2021年4~6月期の経済成長率は前年同期比11.8%と、6四半期ぶりのプラス成長となった。景気拡大の牽引役である個人消費をはじめ、投資、輸出といった主要項目が大きくプラスに転じている。ただ、コロナウィルス変異種デルタ株による感染拡大で、6月にマニラ首都圏で厳しい隔離措置が取られており、それが今後の景気に及ぼす影響が危惧されている。
- インドネシアの2021年4~6月期の経済成長率は前年同期比7.1%と、5四半期ぶりのプラス成長になった。輸出の伸び率が大きく拡大しており、また、個人消費、投資もプラス成長に転じるなど、内外需ともに回復して景気を押し上げた。ただ、コロナウィルス変異種デルタ株による感染拡大を受けて政府が7月に外出制限を強化したため、次の7~9月期は、成長率が再びマイナスに陥る可能性がある。
- ベトナムの2021年4~6月期の経済成長率は前年同期比6.6%と、2021年1~3月期(4.7%)よりも加速した。ベトナム経済は、コロナショック発生以降もプラス成長を維持しており、その底堅さは近隣諸国に比べて際立っている。産業部門別に成長率を見ると、コロナ禍のためホテル・飲食部門は▲4.5%と低迷したが、製造業は13.8%と好調であり、景気拡大を支える主力となった。政府は、2021年通年の経済成長率目標(6.5%)を変えていない。
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