- インドの2021年4~6月期(2021年度第1四半期)の経済成長率は、前年同期比20.1%となり、2021年1~3月期(1.6%)よりも大幅に加速した。成長を支えたのは、個人消費と投資という内需の二本柱であった。ただし、今期の高い成長率は、コロナショックで大幅に落ち込んだ前年同期と比較されて、見かけ上、成長率が高くなるというテクニカルな要因に負うところが大きい。
- インドにおけるコロナウィルス新規感染者数は、2020年6月頃から増加傾向となったが、2020年9月をピークに減少に向かい、その後、横這い状態となった。しかし、2021年3月から5月にかけて変異種デルタ株による第二波の感染増加が爆発的に拡大した。この感染拡大が、2021年4~6月期以降の景気に打撃を与える可能性が危惧されたが、感染拡大の勢いは、その後ひとまず弱まり、コロナウィルスの直接的な影響という意味での景気後退リスクは一旦低下した。
- 昨年春のコロナ禍発生を受け、中銀は、昨年3月と5月に利下げを実施し景気の下支えを図ったが、その後インフレ率が上昇しインフレターゲットの上限である6%を超える状態が続いた。2021年7月のインフレ率は5%台まで下がり、金融緩和の持続を狙う中銀にとっては、一息つける状況となった。
- 乗用車の月間販売台数は、コロナショックで、昨年4月に3万台まで激減したが、昨年夏以降持ち直し、昨年9月には31万台まで回復した。その後、今年5月には、コロナウィルスの第二波感染拡大の影響で8.8万台へ急減したが、6月以降は20万台を超える水準まで急回復している。
- 工業生産指数伸び率は、インド全土で実施されたロックダウンのため、昨年春には大幅な落ち込みとなったが、ロックダウン終了後に急回復した。今年4月には、昨年春の落ち込みからの戻りというテクニカルな要因に影響されて、著しく高い伸び率となった。
- インド経済の抱える深刻な問題のひとつが、慢性的な財政赤字である。大規模な財政赤字の慢性化は、インフレ圧力や経常赤字拡大圧力を高め、健全なマクロ経済運営を妨げ、インド経済の大きなボトルネックになってきた。その財政赤字が、コロナショックの影響で拡大しており、インドの今後の経済成長を制約しかねない状況となっている。
- インド経済が、慢性的な財政赤字・経常赤字という「基礎疾患」を抱えているにも拘わらず、ルピーの為替相場は安定している。巨大市場であるインドには、成長ポテンシャルに魅かれて世界中から資金が流入し、資本純流入額が経常赤字をオフセットするパターンが定着、これによってもたらされる国際収支面でのソルベンシー・リスクの低さを背景に、ルピーの相場が安定していると言えるだろう。
- インドの株価は、コロナ禍による大きな被害を受けたロシアやブラジルと同様、2020年3月に急落した。しかし、その後、インドの株価は、ロシアやブラジルを上回る勢いで急速に回復しており、過去最高値を更新しながら上昇し続けている。これは、インドの今後の経済成長に対する投資家の期待感の高さを反映したものと言えよう。ポスト・コロナ時代も、新興国株式市場の中で、インドは、成長市場として大きな存在感を示し続けそうである。
テーマ・タグから見つける
テーマ・タグから見つける
テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。
テーマ
テーマ