ASEAN-5の経済動向(2021年7~9月期)~デルタ株の影響で、タイ、マレーシア、ベトナムがマイナス成長に転落~

2021/12/07 堀江 正人
アジア景気概況
海外マクロ経済
  • ASEAN-5(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム)の景気は、コロナ禍発生直後の2020年4~6月期に大きく落ち込んだが、その後は回復傾向を維持し、2021年4~6月期には経済成長率が大きく上昇した。しかし、2021年7~9月期には、コロナウィルス変異種デルタ株による感染拡大の影響で、成長率が鈍化した。
  • ASEAN-5のコロナウィルス感染状況は、感染力が強い変異種デルタ株の出現によって、今年春以降激変し、新たな局面を迎えた。これまで感染拡大を封じ込めてきたタイ、ベトナム、マレーシアの3カ国で今年4月以降感染者数が急増、マレーシアでは6月にロックダウンを余儀なくされた。このデルタ株の影響で、タイ、マレーシア、ベトナムの3カ国では、2021年7~9月期の経済成長率がマイナスに転落した。
  • タイの2021年7~9月期の経済成長率は、前年同期比▲0.3%となり、4~6月期に6四半期ぶりにプラス成長へ復帰したばかりなのに、再びマイナス成長に戻ってしまった。需要項目別に見ると、個人消費がマイナスであり、投資(固定資本形成)も若干ながらマイナスになるなど、内需が不調だったことが響いた。
  • マレーシアの2021年7~9月期の経済成長率は▲4.5%と、4~6月期にプラス成長に復帰したばかりなのに再びマイナス成長に戻ってしまった。マレーシアでは、コロナウィルス変異種デルタ株の感染拡大により6月にロックダウン実施に追い込まれ、7月以降も出勤制限などの措置が続いた影響で、景気回復の動きが頓挫してしまった。
  • フィリピンの2021年7~9月期の経済成長率は前年同期比7.1%と、4~6月期(12.0%)よりも減速したが、プラス成長を維持した。需要項目別に見ると、輸出は鈍化したものの、景気拡大の牽引役である個人消費と投資(固定資本形成)が底堅く推移した。当初、新型コロナウィルス感染対策として政府当局が厳しいコミュニティー隔離措置を適用したことから、7~9月期の経済成長率がマイナスに戻ってしまう可能性も指摘されていた。しかし、公共交通機関の運行維持など、経済活動への影響を抑える対策がとられたことなどから、マイナス成長転落を免れたと見られる。
  • インドネシアの2021年7~9月期の経済成長率は前年同期比3.5%と、4~6月期(7.1%)よりも鈍化した。今年6月中旬から7月上旬にかけて、コロナウィルスの変異種デルタ株による感染者数急増に直面した政府が7月に外出制限を強化したため、7~9月期は、生産や販売が大きく落ち込みマイナス成長に陥るとの見方もあった。しかし、7月中旬以降、コロナウィルス感染者数が急速に減少し行動規制が緩和されたこともあって、マイナス成長とはならなかった。
  • ベトナムの2021年7~9月期の経済成長率は前年同期比▲6.2%となり、コロナ禍発生後もずっと維持してきたプラス成長が途絶えた。ベトナムでは、2021年4月以降、コロナウィルス変異種デルタ株による感染が急拡大し、7月からは厳格な社会隔離措置が実施され、経済活動が大幅に落ち込んでしまった。なお、9月以降は、社会隔離措置が緩和されているため、10~12月期の成長率は持ち直すと見られている。

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