- ASEAN-5(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム)の景気は、コロナ禍発生直後の2020年4~6月期に大きく落ち込み、その後、回復したが、2021年7~9月期には、コロナウィルス変異種デルタ株による感染拡大(デルタ・ショック)に見舞われ、経済成長率が全般的に鈍化した。しかし、2021年10~12月期には再び成長率が加速し、続く2022年1~3月期も景気回復傾向を維持した。
- ASEAN-5のコロナウィルス感染状況は、今年2月以降、新型変異種オミクロン株の影響により、タイ、マレーシア、ベトナムで新規感染者数増加が見られた。特に、ベトナムでは、3月中旬に1日当たり新規感染者数が45万人にも達し、ASEAN域内最多となった。しかし、その後、新規感染者数は急速に減少しており、ベトナムの足元の1日当たり新規感染者数は1,000人台となっている。
- タイの2022年1~3月期の経済成長率は、前年同期比1.9%となった。2021年7~9月期には、デルタ・ショックでマイナス成長に転落したが、同年10~12月期にはプラス成長に戻り、今期も景気回復傾向を維持した。民間設備投資が回復したことや、前期は不調だった個人消費の拡大が加速したこと、輸出が好調に推移したことなどが、今期の経済成長率を押し上げた。
- マレーシアの2022年1~3月期の経済成長率は5.0%と、前期よりも加速した。マレーシアでは、コロナウィルス変異種デルタ株の感染拡大により2021年6月にロックダウン実施に追い込まれ、7月以降も出勤制限などの措置が続いた影響で、2021年7~9月期はマイナス成長となった。しかし、2021年10~12月期は、制限措置が緩和されたことで経済活動が回復し、今期もその動きが続いた。
- フィリピンの2022年1~3月期の経済成長率は前年同期比8.3%と、前期よりも若干加速した。2021年9月中旬以降、コロナウィルス新規感染者数が急速に減少し、外出・移動制限が緩和されたことが、景気回復傾向の持続に寄与したと見られる。需要項目別に見ると、景気拡大の牽引役である個人消費が堅調に推移しているのが目立つ。個人消費拡大については、コロナウィルス感染の鎮静化を背景に、娯楽や飲食などを中心に、いわゆる「リベンジ消費」が盛り上がったことによるものと見られる。
- インドネシアの2022年1~3月期の経済成長率は前年同期比5.0%と、前期とほぼ同じ伸び率となった。2021年7月中旬以降、コロナウィルス感染者数が急速に減少し行動規制が緩和されたことで、経済活動正常化と景気回復の動きが続いていると見られる。経済成長率の需要項目別寄与度を見ると、輸出が好調を持続したことと、行動制限緩和の影響による個人消費回復が、景気押し上げの主因となっている。
- ベトナムの2022年1~3月期の経済成長率は前年同期比5.0%と、ほぼ前期並みの伸び率となった。2021年4月以降、コロナウィルス変異種デルタ株による感染が急拡大し、同年7月からは厳格な社会隔離措置が実施され、経済活動が大幅に落ち込み、同年7~9月期はマイナス成長に陥った。しかし、同年9月以降は、社会隔離措置が緩和され、同年10~12月期の成長率は持ち直した。今年2月以降、オミクロン株によるコロナウィルス感染が急激に拡大したが、当局は「ウィズコロナ」政策の下でロックダウンを実施せずに経済活動の抑制を回避し、それが、景気拡大につながったと見られる。
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