インドの経済動向(2022年1~3月期)~ オミクロン・ショックによる景気腰折れを免れたが、成長率は減速 ~

2022/06/22 堀江 正人
アジア景気概況
海外マクロ経済
  • インドの2022年1~3月期(2021年度第4四半期)の経済成長率は、前年同期比4.1%と、2021年10~12月期(同5.4%)よりも減速した。今期の成長率減速は、主に個人消費鈍化の影響を受けたものである。投資(固定資本形成)については、若干加速したものの、まだ本調子とは言えない状況である。なお、2021年度通年ベースの経済成長率は8.7%となり、2020年度のマイナス経済成長率(▲6.6%)をオフセットし、経済規模がコロナショック前を上回る水準まで回復したことが明らかとなった。
  • インドにおけるコロナウィルス新規感染者数は、第一波の感染拡大が2020年9月をピークに減少へ転じた後、2021年3月には変異種デルタ株よる第二波の爆発的な感染拡大が発生した。2022年1月には、新型変異種オミクロン株の感染が急拡大したが、2月に入ると感染者数は急速に減少した。
  • 中銀は、2022年1月以降のインフレ率が急上昇したことを受け、5月に40bpsの利上げを実施し、さらに、6月にも50bpsの追加利上げを実施した。中銀は、インフレ率がインフレターゲットの上限(6%)を超える状況が長期化することを警戒し、金融引き締め姿勢を強めたものと見られる。
  • 乗用車の月間販売台数は、コロナショック発生直後に激減したが、2020年夏以降持ち直した。2021年5月には、コロナウィルス第二波感染拡大の影響で急減したが、6月以降は急回復した。しかし、2021年9月は、半導体不足や原材料価格高騰による生産体制縮小の影響もあって減少した。2021年の祝祭シーズン(10~12月)の特需期の販売は低調で、その後の販売も一進一退である。
  • 工業生産指数伸び率は、インド全土で実施されたロックダウンのため、2020年春には大幅な落ち込みとなったが、ロックダウン終了後に急回復した。2021年4月には、前年春の落ち込みからの戻りというテクニカルな要因に影響されて、著しく高い伸び率となった。2021年9月以降は、半導体不足や原材料価格高騰などで自動車関連業種が生産減となった影響を受け、伸びが鈍化している。
  • インドは、経常赤字が慢性化していたが、2020年は景気悪化で輸入が減ったため、貿易収支が改善し、経常収支も黒字化した。しかし、2021年には、景気回復で輸入が増え、貿易赤字が拡大し経常収支も赤字に戻ってしまった。今後、世界的なコモディティー価格上昇がインドの経常赤字を拡大させ、それが為替下落圧力やインフレ圧力を高める可能性がある点には注意が必要だ。
  • インド経済が、慢性的な財政赤字・経常赤字という問題を抱えているにも拘わらず、ルピーの為替相場は他の主要新興国よりも安定している。巨大市場であるインドは、成長ポテンシャルに魅かれて世界中から流入した資本の額が経常赤字をオフセットするパターンが定着、これによってもたらされる国際収支面でのソルベンシー・リスクの低さを背景に、ルピーの相場が安定していると言えるだろう。
  • インドの株価は、2020年春のコロナショック発生時に大きく下落したが、その後、ロシアやブラジルを上回る勢いで急速に回復し、過去最高値を更新しながら上昇してきた。これは、インドの今後の経済成長に対する投資家の期待感の高さが反映されたものである。ただ、ウクライナ危機によるコモディティー価格高騰が、企業収益を悪化させ、今後、インドを含む新興国の株価下落圧力を高める可能性がある点は懸念材料である。

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