- インドの2022年4~6月期(2022年度第1四半期)の経済成長率は、前年同期比13.5%と、2022年1~3月期(同4.1%)よりも大幅に加速した。今期の成長率加速は、個人消費の急拡大が主因であった。個人消費の急拡大は、コロナ禍のために抑えられてきた潜在的消費需要(ペントアップ・ディマンド)がコロナ禍収束によって一気に顕在化したためと見られる。投資(固定資本形成)についても、前期より大幅に加速しており、個人消費拡大を受けて民間設備投資が盛り上がっていることを示唆する動きとなった。
- インドにおけるコロナウィルス新規感染者数は、第1波の感染拡大が2020年9月をピークに減少へ転じた後、2021年3月には変異種デルタ株よる第2波の爆発的な感染拡大が発生した。2022年1月には、新型変異種オミクロン株の感染が急拡大したが、2月には急激に減少し、その後は低位で横ばいである。
- 中銀は、2022年1月以降のインフレ率が急上昇したことを受け、5月に40bpsの利上げを実施し、さらに、6月にも50bpsの追加利上げを実施した。中銀は、インフレ率がインフレターゲットの上限(6%)を超える状況が長期化することを警戒し、8月の金融政策決定会合でも50bpsの利上げを決め、3会合連続の利上げとなった。今後、利上げによる景気下振れリスクに注意が必要だ。
- 乗用車の月間販売台数は、コロナショック発生直後に激減したが、2020年夏以降持ち直した。2021年5月には、コロナウィルス第2波感染拡大の影響で急減したが、6月以降は急回復した。2021年9月は、半導体不足や原材料価格高騰による生産体制縮小の影響もあって減少したが、その後回復し、足元の販売は増加基調である。ただ、今後、利上げによる影響が懸念される。
- 工業生産指数伸び率は、インド全土で実施されたロックダウンのため、2020年春に大幅に落ち込んだが、ロックダウン終了後に急回復した。2021年4月には、前年春の落ち込みからの戻りというテクニカルな要因に影響されて、著しく高い伸び率となった。2021年9月以降は、半導体不足や原材料価格高騰などで自動車関連業種が生産減となった影響を受け、伸びが鈍化した。その後、2022年4月には7%台となり、5月は19.6%と大きく加速、6月も12.3%と2桁台の伸び率となった。経済活動の正常化に伴う電力生産増加や日用品を中心とする工業製品の増産が、工業生産指数の伸び率加速の背景と見られる。
- インド通貨ルピーの対米ドル為替相場は、米FRBの利上げや、コモディティ価格上昇などを背景に、足元で史上最安値となっている。ただ、インド経済が、慢性的な財政赤字・経常赤字という問題を抱えているにも拘わらず、ルピーの為替相場は他の主要新興国よりも安定している。巨大市場インドの成長ポテンシャルに魅かれて海外から流入した資本額が経常赤字をオフセットしているため、国際収支面でのソルベンシー・リスクが低く、これを背景に、為替相場が安定していると言えるだろう。
- インドの株価は、2020年春のコロナショック発生時に大きく下落したが、その後、ロシアやブラジルを上回る勢いで急速に回復し、過去最高値を更新しながら上昇してきた。これは、インドの今後の経済成長に対する投資家の期待感の高さが反映されたものである。ただ、ウクライナ危機によるコモディティ価格高騰が企業収益を悪化させたり、欧米での利上げの動きが加速したりすれば、今後、インドを含む新興国の株価下落圧力が高まる可能性がある点には要注意である。
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