わが国の設備投資は堅調に推移している。3月の日銀短観では、全産業・全規模の2018年度設備投資計画は前年比10.4%増と、二桁の高い伸びとなっている。19年度の計画も、前年比▲2.8%と小幅減ではあるものの、この時期の翌年度計画は例年マイナスでのスタートであり、底堅さは維持されているといえよう。特に製造業・大企業の計画は前年比+6.2%増と力強い。足もと海外経済の減速で輸出が鈍化するなか、設備投資は景気下支え要因として大いに期待される。
ただ、中長期のトレンドとして、企業が生み出したキャッシュフローとの対比でみてみると、設備投資意欲が近年盛り上がってきているとは言い難い。図表1は、法人企業統計調査から、設備投資(有形固定資産の新設額)とキャッシュフロー(経常利益の2分の1に減価償却額を加えたもの)の推移をみたものであるが、設備投資額はリーマンショック後に落ち込んだあと、2013年頃から回復を続けている。しかし、それ以上のペースでキャッシュフローは増加している。その結果、キャッシュフローに対する設備投資の比率(グラフの点線)は60%弱で横ばいになっており、リーマン前の水準には戻っていない。
この背景には企業の投資行動として、①国内で設備投資をするよりも海外で設備を増強する、②時間を買うために国内外の既存の会社を買収する、といった対応が増えたことも指摘できるだろう。法人企業統計調査は国内の単体財務の集計であるため、海外現法の事業拡大や内外企業の買収は資産のうちの投資有価証券の増加にあらわれるケースが多いと思われるが、実際、図表2に示すように、総資産に占める有形固定資産の比率は低下する一方、投資有価証券の比率が高まってきている。
とはいえ、設備投資がキャッシュフローほどには増えていない要因は、海外生産やM&Aシフトばかりでもないだろう。リーマン前に比べて企業の「攻めの姿勢」が弱まっているとはいえないか。法人企業景気予測調査では、大企業は利益配分スタンスとして「設備投資」が最も重要と回答しているが、重要と認識しつつも、実際の行動には十分反映されていないように思える。わが国企業が競争力を高めていくためには、潤沢なキャッシュを活かし、省力化対応や先進デジタル技術の取り込みなど、より積極的な設備投資行動が望まれるところである。・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)
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