令和時代が始まった。新しい時代にわが国が対処すべき課題は多岐に亘るが、とりわけ生産年齢人口が減少するなかで、労働力人口をできるだけ維持し、かつその潜在力を最大限に発揮させることは、最重要課題の一つといえるであろう。
ここ数年を振り返ると、2012年から18年までの6年間で雇用者は435万人増えた。このうち、304万人は非正規の増加であったが、正規の雇用者も131万人増えている。長く減少傾向にあった正規の雇用者は、2014年をボトムに増加に転じている。また、非正規の雇用者は増加しているものの、非正規でいる理由として「自分の都合のよい時間に働きたいから」という人が増加する一方で、「正規の職がないから」という人は減少が続いている。非自発的に非正規となっている人は減少傾向にあり、この点からも雇用状況は改善していると評価できるだろう。つまり、少子高齢化の進展で生産年齢人口が同じ6年間に470万人減少した状況下にあって、多様な働き方を許容することで女性や高齢者の労働参画が拡大し、雇用者数が増加したことは、平成終盤の大きな成果であったといえる。
しかし、これからの時代は、引き続き労働参加の拡大で労働力人口の減少をできるだけ抑えることに加えて、労働の需要と供給のミスマッチをできるだけ解消し、限られた労働力を最大限に活用することがより強く求められる。具体的には、生産性の低い分野から高い分野へスム-ズに労働力を移行させること、すなわち雇用の流動性を高めることがますます重要になる。
雇用の流動性を示す一つの指標として、「転職入職率」すなわち「常用雇用者に占める転職者(1年以内に転職した人)の割合」をみてみると、過去十数年、小幅に変動しているものの概ね10%前後の水準で推移しており、大きな変化はみられない。この指標からすると、流動化はまだ限定的だといえよう。もちろん、雇用の安定性確保は消費マインドを維持するうえできわめて重要であり、いちがいに転職活発化が良いというわけではない。しかし、成長業種への人材供給を高めるうえでは、労働市場に柔軟性を持たせ、前向きな転職を容易にすることも必要であろう。そのために、年功賃金の再考や、スキル教育の充実など、雇用のあり方全体の見直しが欠かせない。「働き方改革」は、長時間労働の是正やテレワークなど多様な勤務形態の許容にとどまらず、生産性向上に繋がる実効性ある対応が望まれる。新卒一括採用の見直しなど新たな動きも出てきており、今後の進展に期待したい。・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)
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