18年度のわが国一般会計の税収は60.4兆円と、バブル期ピークを上回り過去最高となった。これは、14年の消費税率引き上げ(5%→8%)に加え、景気拡大を背景とした所得・収益の改善によるもので、財政健全化の点から好ましい結果といえる。
税収構造はバブル期から大きく変化した(図表1)。90年度に18兆円であった法人税は、18年度は12兆円にとどまり、税収全体に占める比率も3割から2割に低下した。所得税も比率は低下したが、金額規模は20兆円と法人税の1.6倍である。一方、89年に導入された消費税は90年度の5兆円から18年度には18兆円へと大幅に拡大した。消費税は国民が幅広く負担する安定的な財源として、歳入における貢献度が高まっている。今秋の10%への税率引き上げ後は、その傾向がより顕著になるであろう。
法人税もリーマンショックで大きく落ち込んだ09年度をボトムに足もとは改善傾向にある。しかし、企業業績の改善度合いに比べると伸びは限定的である。図表2は、法人企業統計から、税引前利益と税(税引き前利益と当期純利益の差。国の法人税のほか地方税も含む)を示したものであるが、増益が続く中で税負担はあまり増加していない。
これには2つの要因がある。一つは法人減税のトレンドが続いてきたことである。89年に40%であったわが国の法人税(国税)の基本税率は、引き下げを続けて現在は23%台となっている。企業競争力の維持・向上のため世界の主要国がこぞって法人税を引き下げており、わが国としても同様の対応が必要であった。因みに米国は昨年、法人税率を35%から21%に引き下げたが、その結果18年度の法人税収は前年比3割以上も減少した。もう一つの要因は、わが国企業の海外展開である。海外子会社からの配当収入等の殆どは法人税収には結びつかず、事業の海外シフトが進めば税収は伸び悩む。
では今後、企業活力をどう税収につなげてゆけばよいか。主要国の法人税引き下げ競争が続く可能性は高く、わが国としても世界の潮流にあわせた税率の抑制は必要であろう。海外展開の拡大傾向も続くと見込まれ、法人税収の大幅な増加は見込みにくい。したがって、税収全体の増加には消費税と所得税の役割が増すが、この点で企業に期待はかかる。政府は法人税率抑制とともに規制緩和など成長戦略推進によって企業活動をサポートし、その追い風を受けて企業は収益力を強化し、その果実を賃金や配当として家計に還元する。そうした好循環によって、企業競争力の向上を消費税・所得税の増収に結びつけていくことが求められよう。・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)
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