今月のグラフ(2019年9月)日韓の経済関係の立ち位置

2019/09/10 中塚 伸幸
今月のグラフ
国内マクロ経済

日韓関係の悪化が深刻である。観光など経済面にもマイナス影響が出始めており、懸念される。関係改善は政治の問題であろうが、ここでは日韓の経済的な立ち位置に関し、幾つかファクトを確認したい。

まず、韓国が対日強硬姿勢をとる一つの背景として、キャッチアップを遂げた韓国には、日本を同等のライバルとみる国民感情があるといわれる。IMF統計によれば、2018年のドル換算名目GDPは日本が5.0兆ドル、韓国が1.6兆ドルで、日本は韓国の約3倍の規模である。ただ、過去からの推移をみると、90年代には10倍以上であった差は着実に縮小してきている(図表1)。

また、貿易立国である韓国にとって、中国の重要性が急速に高まり、日本への依存度が相対的に低下している。特に輸出においてはそうである。そもそも韓国は、輸出依存度(輸出額のGDPに対する比率)が約4割で、2割に満たない日本や中国と比べてかなり高いが、その中でも輸出全体に占める中国向けの比率は近年大きく上昇し、足もと27%に達する(図表2)。それゆえに、18年後半以降は中国景気減速の直撃を受けて輸出が低迷し、景気の足を大きく引っ張っている。

ただ、輸入面では若干様相が異なる。輸入でも中国の比率は高いが、日本の比率も10%と相応の依存度がある(図表2)。かつ、日本からの輸入品は代替が難しい製品も多い。「輸出管理強化」の対象となった化学品はまさにそうした品目であったため、衝撃が大きかった。韓国としては今後国産化を目指す考えのようだが、容易ではないだろう。他にも、半導体が主力産業である韓国にとって半導体等製造装置は欠かせないが、日本からの輸出額は6300億円(18年)にのぼる。

逆にいえば、日本にとっても韓国向けの化学品や半導体等製造装置は重要な輸出品であり、たとえば半導体等製造装置だけで総額5.8兆円の対韓輸出全体の1割以上を占める。足もとはITサイクルが調整局面にあることから半導体等製造装置の輸出も前年割れが続くが、韓国向けは全体の23%を占め中国に次ぐ二番目の輸出相手国だ。このほかインバウンドでも、韓国人訪日客の消費額は昨年で5,880億円と全体の13%を占める。九州などでは依存度はより高く、足もと韓国人旅行者の急減に苦慮している。

わが国経済全体でみれば日韓関係悪化による影響は限定的との見方もできるが、一方でこれまで両国が経済面で連携し、メリットを享受してきたことも事実だ。悪影響が最小限にとどまることを望みたい。・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)

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