今月のグラフ(2020年3月)自粛長期化ならリーマンショック並みの消費下押し

2020/03/06 中塚 伸幸
今月のグラフ
国内マクロ経済

新型コロナウイルスは当初、「中国の問題」という見方から、訪日外国人消費の落ち込みや中国の生産停滞に伴う輸出・生産への悪影響が懸念された。しかしその後、国内での感染が拡大し、これを阻止するため各種イベント、旅行、出張、外出などの自粛が拡がったことで、わが国の消費にも大きな影響が及ぶこととなった。実質雇用者報酬など所得環境は良好であったため、増税による消費の腰折れは避けられると見込んでいたが、新型コロナの影響で、少なくとも短期的には状況が変わったといえる。

“コロナショック”がどれだけのマイナス影響を及ぼすかは、感染がいつ終息するかにかかっており、見通しは難しい。ただ、過去の「ショック時」の状況を踏まえておくことは、インパクトを推察する上で有効であろう。図表1は2005年以降のSNAベースの実質個人消費(季節調整値)の前期比増減率を示しているが、増税以外の過去の「ショック時」をみると、東日本大震災があった2011年1-3月期は前期比▲1.8%と、直前2010年10-12月期がエコカー減税終了等の影響で前期比マイナスになっていたところに、さらに大幅なマイナスとなった。しかし、翌4-6月期にはプラスに転じている。マインドをあらわす景気ウォッチャー調査の現状判断DIも同じ年の6月には震災前の水準に戻っている(図表2)。直接の被害地域がある程度限定されたこと、及びその後の復興需要もあったことから、全国ベースの消費は比較的短期間で回復したものと考えられる。

一方、リーマンショックの際は、2008年4-6月期から4四半期にわたって前期比マイナスが続き、マインドの悪化も長期に及んでいる。今時コロナショックは活動自粛が全国に及んでおり、長期化すれば雇用面への波及などから影響度は震災時よりもリーマンショック時に近くなる懸念がある。

旅行・レジャー、外食、交通など自粛の影響を受けやすいレジャー関連の消費はGDPの個人消費の1割強を占めるとみられ、かりに半月間これらがゼロになれば、当該四半期の個人消費はそれだけで2%程度下押しされる。2020年1-3月期の消費が前期比マイナスになることは避けられないだろう。本来、コロナショックは一時要因であり、終息に向かえば震災時のように比較的早期の回復も期待できる。4月以降、徐々に正常化することをメインシナリオと考えたいが、万が一、自粛(活動停止)が長期化すればリーマンショック並みの消費落ち込みとなる可能性があり、企業の資金繰り支援など最大限の対策が求めらよう。

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