新型コロナウイルスの感染拡大が米国経済に深刻な打撃を与えている。米国の感染者数は現時点で33万人と世界で最も多く、ニューヨーク州をはじめ40以上の州で外出制限措置が採られた結果、すでに雇用にも甚大な影響があらわれている。3月の非農業部門雇用者数は前月に比べて70万人減少し、2010年10月以来の連続増加が途切れたばかりか、いきなりリーマンショック後の最悪時に並ぶ大幅な減少となった(図表1)。週次ベースの新規失業保険申請件数も直近2週間で約1千万件にのぼっており、雇用指標は来月以降さらに悪化する見込みである。
今回の調整の特徴は、短期間で一気に雇用が悪化したことである。外出制限によって、外食、観光、運輸などの需要はほぼ瞬時に消滅した。3月に70万人の雇用が失われたうちの実に60%はレストランなど外食産業の従業員であり、そのほかの業種の構成比は小売業7%、建設業4%、製造業3%などとなっている。これに対し、リーマンショック後の雇用悪化が最も深刻であった2008年11月から2009年4月までの6ヵ月間をみてみると、全米で累計445万人の雇用が失われたうち、外食は4%(16万人)で、製造業25%、建設18%、小売12%など、幅広い業種で雇用が減少した。今般のコロナショックにおいても、この先、雇用調整が他の業種にも広がるものと考えられるが、初期段階においては従来の景気後退時とはやや異なるパターンで雇用悪化が生じていることも事実だ。この点、製造業や建設業などへの波及を最小限に抑えることができれば、行動制限の緩和とともに雇用が比較的早期に回復する一面もあるといえよう。
ただ、リーマンショック後の推移をみてみると、企業の景況感は2009年の後半にはショック前の水準に回復した一方で(図表2)、雇用者数が2007年末の水準に戻ったのは2014年になってからと、回復には長い期間を要している。これは、企業が業績悪化のダメージをその後も引きずるという、いわゆる履歴効果のため、雇用の再拡大に慎重になったものと考えられる。リーマンショックの際は信用不安が経済全体に広がったために、こうした履歴効果も大きなものがあった。足もと米政府は個人への現金給付とあわせて中小企業支援策等を打ち出しているが、コロナ感染収束後の雇用の回復を遅らせないためには、金融面の目詰まりを回避し企業破綻を最小限に食い止めることが不可欠である。・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)
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