原油相場は、2020年11月初に米国産のWTIで1バレルあたり33ドル台、欧州北海産のブレントで35ドル台と5カ月ぶりの安値をつけた後に上昇に転じ、2021年1月4日には、一時WTIが49ドル台、ブレントが53ドル台の高値をつけた。昨春に石油輸出国機構(OPEC)にロシアなど非加盟産油国を加えた「OPECプラス」が協調減産で合意できずに急落する以前の相場水準に戻している。
振り返ると、秋になって、サウジアラビアによる原油販売価格の引き下げ、米追加経済対策を巡る協議の難航、欧米での感染拡大などが弱材料となり、相場は軟調だった。しかし、11月にワクチン開発への期待が高まると、株式や工業用金属など他のリスク資産と同様に原油相場も持ち直した。
12月3日にOPECプラスの閣僚会合で協調減産の小幅縮小で合意したことも支援材料だった。OPECプラスは、当初、それまで行っていた日量770万バレルの協調減産を2021年1月からは同580万バレルへと縮小する予定だった。しかし、需給緩和懸念が根強い中、減産幅を同50万バレル縮小し、同720万バレルとすることを決定した。同時に閣僚会合を毎月開催することや、毎月の減産縮小幅が同50万バレルを上回らないことなども決定した。産油国は協調減産体制を維持するのに成功したと受け止められた。
そうした環境下、他のリスク資産に比べて出遅れていた原油に対して、見直し買いが強まることになった。株価や金属価格がコロナ前の水準を上回っているのに対して、原油価格はまだそこまで上昇しておらず、まだ上昇余地があるようにもみえた。それでもワクチンへの期待を受けた相場上昇はやや行き過ぎていたと思われる。世界の石油需要は持ち直してきているが、依然前年水準を6%程度下回っている。米国などの新規感染者数は高水準で推移しており、新型コロナウイルスの変異種への警戒感から新たな制限措置が採られて、石油需要がさらに落ち込む懸念もある。
また、OPECプラスは、1月4日の会合で、2月からの減産の縮小の可否を協議したが、結論を持ち越した。当初は、協調減産幅を日量50万バレル縮小して同670万バレルとするとみられていたが、サウジアラビアなどが石油需要の低迷への懸念を強める中、減産幅を同720万バレルに据え置くとの見方が強まる状況となっていた。しかし、ロシアなどが同50万バレルの縮小を主張し、折り合いがつかなかった。OPECプラスの協調減産体制は維持されるとみられるものの、産油国間の意見の相違も印象付けられた。
米新政権下では、環境重視の姿勢からシェールオイルの開発・生産が抑制されて原油需給が引き締まるとの見方もある。しかし、イランやベネズエラに対する制裁が緩和されて原油供給が増えたり、ガソリン車への規制が強化されて石油需要が減るため、原油需給は緩和するという観測の方が強まりやすいように思われる。これまでの相場上昇を受けて、シェールオイル増産も視野に入ってくる。2021年の原油相場は経済正常化に伴って上昇が見込まれるが、目先は調整含みだと思われる。
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