インド経済は、昨年春のコロナショックによって大幅な景気後退に陥ったが、その後、景気は回復軌道に乗っていた。しかし、今年3月に変異種ウィルスによる第2波の感染拡大が発生、今後の景気回復に暗雲が垂れ込めている。
昨年のコロナ禍発生直後、インドの2020年4~6月期(2020年度第1四半期)の経済成長率は、前年同期比▲24.4%と大幅なマイナス成長に陥った。インドの四半期ベースの経済成長率がマイナスに転落したのは、40年ぶりであった。インド政府は、コロナウィルス感染拡大防止のため、2020年3月25日から5月31日まで、インド全土で13億人の国民を対象に「史上最大規模のロックダウン」と称される外出禁止令を実施、政府や企業の活動がほぼ機能麻痺状態に陥り、経済成長率が大幅に落ち込んでしまった。
2020年7~9月期は、社会活動規制が緩和されたことで、経済活動が正常化に向かい、それを反映する形で、個人消費や投資が回復した。乗用車販売は、2020年3月から5月にかけて大幅に落ち込んだが、6月以降持ち直し、8月以降はプラスに転じ、9月と10月は40%近い伸び率となった。これは、ロックダウン期間中に鬱屈状態にあった需要(ペントアップ・デマンド)が一気に表出したためと見られる。
2020年10~12月期(2020年度第3四半期)の経済成長率は、7~9月期よりも大幅に改善、3四半期ぶりにプラス成長に回復した。政府の方針が「景気より命」から「景気も命も」へ転換し景気刺激のための財政支援が本格化したことなどから、景気回復が加速した。
2021年1~3月期(2020年度第4四半期)の経済成長率は、前年同期比1.6%と、2020年10~12月期よりもやや加速し、2四半期連続のプラス成長となった。また、2020年度通年の経済成長率は、▲7.3%となった。2021年1~3月期の成長率がプラスになったのは、政府消費と投資(固定資本形成)の拡大に負うところが大きく、個人消費も1年ぶりにプラス成長に復帰した。内需がようやくプラス成長に戻ったことで、インドの今後の景気加速が期待できそうな状況が訪れていた。
しかし、ようやく回復したインド経済を、コロナウィルス感染再拡大の衝撃が襲った。インドにおけるコロナウィルス新規感染者数は、2020年3~5月に実施したロックダウンの期間中は抑えられていたが、ロックダウン終了後に増加、その後、2020年9月をピークに減少に転じていた。しかし、2021年3月に入ると、変異種ウィルスによる感染者が急増し、4月には感染拡大が爆発的な勢いで加速、インド政府は再びロックダウン実施を余儀なくされた。このコロナウィルス感染拡大の第2波が、2021年4~6月期以降の景気に打撃を与えるのは避けがたく、回復してきたインド経済の先行きに対する不透明感が増している。
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