今月のグラフ(2021年10月) 低水準続く訪日客数と高水準の一人当たり免税店売上

2021/10/05 塚田 裕昭
今月のグラフ
国内マクロ経済

日本銀行大阪支店が毎月公表している「百貨店免税売上(関西地域)」によると、2021年8月の関西の百貨店免税売上指数は186.9(2013年4月を100とした指数))、前年同月比で35.1%の増加となった。関西に限らずインバウンド消費はコロナ禍でほぼ消滅状態となっているが、そのような中で免税店売上は、かつての水準に比べれば極めて低い水準であるものの、外国人観光客の入国を原則認めていない状況下では水準が上がっている(図表1)。

一方、関西国際空港を利用した外国人旅客数は2021年8月で前年同月比26.9%減の6,086人。免税店売上高指数のように2013年4月を100として指数化すると1.3という低水準だ。関西を訪れる外国人観光客は、関空以外から入ってくる場合ももちろんあるだろうが、関空経由を見る限り外客数はほとんど戻っていない状況だ。

外国人旅客数が増えない中で免税店売上が増加しているということは、一件あたりの売上金額が増加しているということだ。「百貨店免税売上(関西地域)」では、売上高指数のほかに件数指数も公表されているので、前者を後者で割って一件あたりの売上高の推移をみてみると、新型コロナウイルスの感染拡大後、水準が上昇し、足下では6~7倍程度の水準で推移している(図表2)。

指数ではイメージがつかみにくいので、金額ベースでの推移をみてみよう。日本百貨店協会では全国の値ではあるが、百貨店免税売上の「一人当たり購買額」を公表している。これによると、8月は429,000円。日本銀行大阪支店のデータ同様、新型コロナウイルス感染が拡大した2020年春先以降に水準が急上昇し、感染拡大前の平均的な水準である約70,000円に比べ、最近ではおおよそ6倍程度まで上昇している。

一人当たり購買額が上昇しているのは、購買層の中身が以前と変わっていることが影響していると考えられる。コロナ感染拡大前は、外国人旅客の大部分が一般観光客であったが、現在では観光目的の来日は認められていない。そのような中でも低水準ながら外国人旅客が日本を訪れているが、これは商用、公用など仕事上の目的での来日を特別に許された層によるものだ。推測ではあるが、原則来日禁止という現在のような状況下で来日を許される層は、おそらくは相応の社会的地位を有する経済的にも余裕のある人々である可能性がある。

日本の消費関連統計をみると、個人消費全体としてはコロナ感染拡大後低迷が続くが、内訳をみると全てが低迷しているわけではなく、例えば高額品消費などは比較的堅調な動きをしている。コロナ感染が拡大する状況であっても所得は減らず、飲食・宿泊といったサービス消費をしなくなった分、高額品などモノの消費に回す層が一定数存在する。

このような動きは海外の消費者も同様と考えられる。所得面での悪化がそれほどでもなく、サービス消費に使わない分をモノの消費に回すことができる層が、仕事上の目的で来日し、この機会に乗じて免税店で高額の買い物をする。こういった動きが一人当たり免税店購買額の上昇につながっていると考えられる。

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