日本の三大都市圏、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)、大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)の近年の人口移動動向を見ると、東京圏は転入超過、大阪圏、名古屋圏は転出超過が続いている。進学、就職などの機会を求めて、毎年多くの人が田舎を出て都会へ向かうが、三大都市圏でも人を集めているのは東京圏のみというのが実情だ。東京圏の転入超過幅は、コロナ禍の影響で2021年に減少し、東京圏一極集中の緩和が取り沙汰されたが、2022年は再び増加。やはり人々の東京志向は変わっていない模様だ。
人口の転出が続く大阪圏と名古屋圏であるが、このところの動きは対照的だ。ともに転出超過ながら、大阪圏は転出超過幅が縮小傾向、名古屋圏は拡大傾向にある(図表1)。大阪圏、名古屋圏ともに東京圏への転出が大きく、トータルでは転出超が続いているが、他地域から人を集める力の違いが、この傾向の差となってあらわれている。
大阪圏と名古屋圏のそれぞれの中核である大阪府と愛知県の転入超過人数の推移を見てみると、大阪府で転入超過が続いている一方で、愛知県は転出超過が続いている(図表2)。大阪圏と名古屋圏の人口吸収力の差は、中核となる大阪府と愛知県の差に起因すると考えられる。
2022年の大阪府と愛知県の主な転出超過先を見てみると、共に東京都、神奈川県への転出超過が多数となっており、その転出超過数は概ね同水準である。一方、愛知県からは大阪府に多数転出しており、このことが大阪府と愛知県の人口移動の傾向の差の一因となっている。
転入超過先について見てみると、大阪府は兵庫県、京都府、愛知県は三重県、岐阜県と、共に圏内の近隣府県からの流入が上位を占めているが、これらは圏内での移動であるため、圏単位での転入超過数には影響しない。影響するのは、圏外からの転入であるが、圏外からの転入超過の規模という点で、大阪府と愛知県にはかなりの差がある。大阪府の人を集める力は、愛知県をかなり上回っているようだ。
大阪府と愛知県の経済規模を比較すると、直近の2019年度の名目県内総生産はそれぞれ、41.1兆円、40.9 兆円とほぼ拮抗している。2019年度の規模では大阪府が愛知県を上回っているが、2015年度から2018年度の間は愛知県が大阪府を上回っていた。かつては東京都に次ぐ二番手の地位は大阪府の定位置であったが、最近ではそうとも言えなくなっている。とは言え、経済規模ではほぼ互角の両県であるが、人の流れをみる限り、就業機会や就学機会の多さ、人を集めるための都市機能の充実度では、まだ大阪府に一日の長があるようだ。
今後についても、大阪府では、うめきた2期、大阪万博、IRなど、就業機会の増加につながるイベントが相次ぐ。また、コロナ禍でほぼ消滅していたインバウンドも昨年10月の入国制限の緩和以降、急ピッチで戻ってきており、更に中国からの観光客が戻ってくるようになれば、インバウンド関連業種での求人も増加する。大阪府、大阪圏の人口の吸収力は、当面増加傾向を維持すると考えられる。
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