今月のグラフ(2024年1月)円安ユーロ高は反転へ

2024/01/05 土田 陽介
今月のグラフ
海外マクロ経済
金融

2023年の外為市場では、円安ユーロ高が急速に進んだ。取引初日である1月2日のユーロ円レートは終値で1ユーロ=139.38円だったが、11月16日には取引時間中の最高値で164.35円まで円安ユーロ高が進んだ。その後、12月に入ってユーロ円レートは160円を割り込んで推移しているが、2023年のユーロ円相場は2008年以来の円安水準となった。

ユーロ円の購買力平価(PPP)レートは、企業物価ベースと消費者物価ベースだと1ユーロ=80円前後、輸出物価ベースだと110円前後が適正値となる(図表1)。購買力平価は為替レートを説明する一つの考え方であるため、それがどの局面でも妥当であるとはいえないが、どのベースのPPPレートで見てもユーロは円に対して過大評価されていると評価できる。2008年と2023年にユーロ円レートは極端な円安ユーロ高に振れたが、共通する理由として、欧州中銀(ECB)が金融引き締めを進める一方で、日銀による金融緩和の修正が限定的だったことがある。

2024年のユーロ円相場を展望すると、多少なりともユーロの過大評価が修正され円高ユーロ安が進むと予想する。最大の理由は、金利差の縮小にある。ユーロ圏の消費者物価は最新11月時点で前年比2.4%上昇と、ディスインフレが着実に進んでいる(図表2)。欧州連合(EU)がロシアとの間でエネルギー問題を抱えている以上、予断を許さないものの、ユーロ圏のインフレはECBのインフレ目標(中長期的に2%)を達成しつつある。米連銀(FRB)が早ければ2024年前半に利下げを行うという観測も支えとなり、ECBも2024年中には利下げに転じると予想する。

他方で、日本の消費者物価は最新10月時点で前年比3.3%上昇と9月(同3.0%上昇)から伸び率が上昇している。日銀が重視するコアCPI(生鮮食品除く総合)も10月は同2.9%上昇と、9月の同2.8%上昇から高止まりしている。また日銀は10月に発表した最新の『展望レポート』の中で、2024年度のコアCPIが2.7-3.1%上昇のレンジとなり、2023年度(2.7-3.0%)とほぼ同水準になると予想している。日本の潜在成長率に鑑みれば、相応の高インフレが続くことになると日銀は予測していることになる。

こうした状況に鑑みれば、日銀はマイナス金利政策やイールドカーブコントロール(YCC)の修正・撤廃を模索することになる。日銀は慎重に金融緩和の修正を進めるため、日本の金利は僅かな上昇に止まるだろう。とはいえ、ECBが利下げを行い、日銀が金融緩和の修正を行えば、円とユーロの間の金利差は縮小する。そのため、ユーロ円相場はユーロの過大評価が修正されるというのが、2024年の外為市場のメインストーリーとなると予想する。

どの程度のユーロ安円高になるか定かではないが、半値戻しということで、まずは1ユーロ₌150円を割り込む展開を目指すのではないだろうか。いずれにせよ、ヨーロッパ側で金融危機が生じるなど、投資家のリスクセンチメントが急速に悪化した場合でなければ、ユーロ円相場がPPPレートの水準近傍まで接近することはないと考える。

図表1 ユーロ円レートの実績値と購買力平価

ユーロ円レートの実績値と購買力平価

図表2 ユーロ圏と日本の消費者物価

ユーロ圏と日本の消費者物価

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