2024年8月、日本列島各地で自然災害が発生した(図表1)。中でも8月8日に発生し、南海トラフ地震臨時情報の発出にも繋がったマグニチュード7.1の宮崎県日向灘地震、12日に岩手県大船渡市付近に上陸した台風5号、29日に鹿児島県薩摩川内市付近に上陸した台風10号の3つは、甚大な被害をもたらした。
こうした自然災害は被災地のインフラを破壊し、大きな傷跡を残すとともに、被災地以外の地域も含め、人々の消費活動にも悪影響を及ぼす。例えば、各種注意報の発令や公共交通機関の機能麻痺は人々の外出抑制につながることから、消費活動を押し下げると考えられる。もっとも、自然災害の発生は人々の防災意識を高める面もあり、備蓄需要を刺激することで消費を押し上げる可能性もある。
そこで、内閣府「景気ウォッチャー調査(令和6年8月調査結果)」をもとに、8月に発生した自然災害が家計動向関連の景気ウォッチャーによる景気の現状判断に与えた影響を分析することで、消費活動への影響度合いを確認した。具体的には、公表されている主なコメントのうち自然災害に関する語句(「南海トラフ」、「地震」、「台風」、「災害」)が含まれているものを抜き出し、それらのみで景気の現状判断DI(方向性)を業種別に作成した。その上で、公表されている全回答者による現状判断DI(方向性)との差分を求めた。仮にプラス(マイナス)の値となれば、自然災害の発生が消費の押し上げ(押し下げ)に作用した可能性が示唆される。
分析結果(図表2)を見ると、サービスやコンビニ、百貨店はマイナスの値となっており、消費が押し下げられたことが分かる。これらの業種では、「台風や地震の影響で客は旅行を自粛する傾向があり、明らかに客の動きが減少している。(都市型ホテル/スタッフ/九州)」や「台風が接近し来客数に大きな影響を与えている。(遊園地/経営者/東北)」のように、自然災害が客数の減少につながった。一方、スーパーはプラスの値となっており、消費が押し上げられたことが分かる。「地震や台風への防災意識が高まり、定番品を中心に売上が伸びている。(スーパー/企画/近畿)」のように、自然災害が人々の備蓄需要を刺激した姿が見て取れる。各業種が扱う品目に着目すれば、自然災害は耐久財や半耐久財、サービス等の多くの品目の需要にマイナスに作用したとみられるが、日用品等の非耐久財の需要が刺激されたことは、7-9月期の個人消費の落ち込みを幾分緩和した可能性がある。
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