2024年4~6月期の家計最終消費支出(以下、個人消費)は、自動車などの耐久消費財を中心に実質値では5四半期ぶりに増加した。物価上昇が続いていることから名目値は4四半期連続で増加して、過去最大を更新した。同期の家計可処分所得は、名目値では4四半期連続で増加し、コロナ禍で1人10万円の特別定額給付金が支給されて過去最大となった2020年4~6月期に次ぐ高い水準となった(図表1)。4~6月期の家計可処分所得の増加要因として、年収が2,000万円以下の人を対象とした1人あたり4万円の定額減税が6月から実施されたことに伴う税負担の減少、家計の所得の中心的な存在である雇用者報酬と利子や配当などの財産所得の純受取の増加などがある。
この結果、4~6月期の家計貯蓄率は3.7%となり、2022年1~3月期以来の高い水準となった。家計貯蓄率は、コロナ禍で低迷した実質個人消費の回復や物価上昇の影響を受けて名目個人消費が増加したことから2023年4~6月期から10~12月期にかけて3四半期連続で小幅なマイナスとなった後、2四半期連続で上昇した。2024年1~3月期は自動車の認証不正問題の影響を受けて自動車販売台数が落ち込んだことから実質個人消費が減少したといった事情があったが、物価が上昇する中、名目個人消費は可処分所得の増加ほどには増えていない状況である。
こうした要因の一つに消費者マインドの低迷があると考えられる。消費者マインドを表すとされる消費者態度指数は、改善に足踏みがみられる状況である(図表2)。消費者態度指数は、コロナ禍では主に感染者数の動向の影響を受けて変動していたが、物価上昇が顕著となった2022年以降は消費者が予想する物価上昇率の影響を受けるようになっており、予想物価上昇率が高まると消費者態度指数は低下する傾向がみられる(図表2)。消費者が予想する物価上昇率は足もとの物価動向などに基づいていると考えられ、賃金の伸びが物価上昇率を下回る状況の下、物価上昇が続いていることによって消費者マインドが下押しされ、消費支出の増加に慎重になっている可能性がある。
個人消費の動向に影響を及ぼす実質賃金は、ボーナスが増加した影響もあって2024年6月、7月には前年比で増加し、ボーナスによる押し上げがなくなった8月には再び前年比で減少したものの、減少幅は縮小傾向にある。実質賃金が安定的に増加するようになれば、賃金の伸びが物価上昇率を上回る状況であることから、消費者マインドが改善し、実質個人消費も増加すると考えられる。こうした観点からは、来年の春闘において物価上昇率を上回るベースアップが実現されることに加えて、そうした賃上げをより多くの人々が実感できることが期待される。
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