今月のグラフ(2025年2月)インド株 ~ 新興経済大国の中で独り勝ちの背景

2025/02/05 堀江 正人
今月のグラフ
海外マクロ経済

近年、世界の主要な新興経済国の中でも高い経済成長率を示し注目されている国がインドである。好調な経済を背景に、インドは、株価の面でも他の新興国を上回るパフォーマンスを示している。インドの株価の動きを主要新興国の株価の動きと比較して見ると、2010年代以降、インドが四大新興国BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の中で「独り勝ち」状態である。特に、モディ現首相の率いるインド人民党(BJP)政権が発足した2014年以降、モディ政権の経済自由化・成長を重視する政策に対する投資家の期待感が高まり、また、実際に経済成長率も6~8%の高い伸びが続いた。そうしたことが、インドの株価の中長期的上昇を支えてきた。

インドの株価は、2010年代は上昇傾向が続いたが、コロナショックに見舞われた2020年3月に、ロシアやブラジルと同様に急落した。その後、インドの株価は、コロナウィルス感染拡大の動きがピークアウトしたことを受けて回復したが、2022年1月中旬からは、米国の金利上昇への警戒感などから、下落に転じ、2022年2月末にロシアのウクライナ侵攻が開始されると、投資家のリスク回避的な傾向が強まり、株価はさらに下落した。しかし、2022年6月以降は、原油価格下落などを好感した買いが増えた影響で、株価は上昇傾向となった。その後、コロナショックからの景気回復の力強さに支えられて、インドの株価は、ロシアやブラジルを大きく上回る勢いで急速に上昇し、過去最高値を更新し続けたが、2024年10月には、主要企業の7~9月期の決算が低調だったため、インドの株価は、自動車や消費財関連の業種を中心に大きく下落した。ただ、他の新興経済大国が政治・経済の両面で安定性を欠いていることもあり、今後も、インドが新興国株式市場をリードするパターンは続きそうだ。

前述のように、インドの株価上昇は、基本的には実体経済の好調さに支えられているが、インド経済が好調な理由について、投資率(投資/GDP)との関連性という視点から考えてみよう。BRICsの投資率と経済成長率の2010年以降のトレンドを見ると、まず、インドは、投資率がロシアとブラジルより高く、経済成長率も両国より高い。これは、インドが盛んに投資を行い、投資主導で高い経済成長率を達成していることを示すものと考えられる。一方、インドと中国を比較すると、中国は投資率が高いのに経済成長率は低下傾向であるのに対し、インドは投資率が中国より低いものの経済成長率は近年中国を上回っている。これは、中国の投資が過剰な生産設備・建物などの建設に向けられ、いわば無駄な投資となって経済成長に結びついていない状態に陥りつつあることを示すものと考えられる。このように見ていくと、インド経済は、他の新興経済大国と比べて効果的に投資を行うことによって高い経済成長率に結び付けるという健全なサイクルで回っていると言えよう。この状態が持続する限り、今後もインドの株価が押し上げられる可能性は高いと予想される。

図表1 BRICsの株価の推移(2010年1月末=100として指数表示)
図表1 BRICsの株価の推移(2010年1月末=100として指数表示)
(出所)CEIC
図表2 BRICsの投資率の推移
図表2 BRICsの投資率の推移

図表3 BRICsの経済成長率の推移
図表3 BRICsの経済成長率の推移

(出所)International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2024

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