自動車メーカーの電動化戦略が早くも踊り場に入った。主要12カ国と北米3カ国のBEV(バッテリーEV)販売台数は、2023年12月の月販98万台をピークに、2024年7月は月販68万台まで減少している。背景の一つに、BEV販売がアーリーアダプターに一通り広まった結果、消費者が航続距離や充電に関する問題に気づき、一部がPHEVへシフトしていることが挙げられる。実際、PHEV販売台数は2022年7月の月販20万台から、2024年7月には月販50万台まで増加している[ 1 ]。
このような状況下で、自動車メーカーは電動化戦略の見直しを迫られ、それに伴い部品メーカーも対応が求められている。一部の部品メーカーは、自動車メーカーからBEV部品のための生産能力確保について依頼を受け、既に設備投資している。今後どのようなスピード感でBEVが増加し投資回収が可能になるのか見極めながら、戦略の軌道修正を始めている。
一方で、自動車業界に起きている変化の波は電動化だけではない。内装やボディー部品の変化、自社が担ってきた役割の消滅、これまでとは異なる競争相手の出現といった、いずれも抜本的な構造変化が求められている。また、電動化の進展が足踏みしている状況からも分かるように、自動車業界の変化は10年以上かけて徐々に進行するため、一過性の経営改革では太刀打ちできない。状況の変化を常に捉えながら、継続的な取り組みが必要である。翻って、自動車メーカー自身も将来に対する明確な答えを持ち合わせておらず、自動車メーカーから部品メーカーへの支援もリソース(経営資源)の制約などから限られている。
従って、部品メーカー各社はこれらの大きな変化に対して、自社で独自の解決策を見つける必要性に迫られている。新規販路を獲得するなどの部分的な取り組みは多く見られるものの、組織は有機的な存在であり一部を変えれば全体のバランスを取るために他の部分も変える必要があるが、統合的な取り組みに至っていないケースが多い。
このような抜本的かつ、長期的・継続的な取り組みを、組織全体のバランスを見ながら統合的に進めるためには、どのような基本コンセプトと切り口を持って推進し、組織の能力として定着させればよいのだろうか。本稿では、自動車部品メーカーにおける経営改革の方向性と方法論について考察していく。
[ 1 ]MARKLINES 電気自動車(BEV/PHV/FCV)販売月報 2024年7月
主要12カ国:中国、米国、日本、インド、ドイツ、フランス、ブラジル、英国、韓国、カナダ、イタリア、タイ
北欧3カ国:ノルウェー、スウェーデン、フィンランド。電気自動車の世界販売に占めるこれら15カ国の割合は約90%
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