平成29年度 自治体経営改革に関する実態調査報告

2018/06/06 大塚 敬
自治体経営
自治体
独自調査
変化を捉える【国・地域】

人口減少と高齢化を背景とした税収の伸び悩みや福祉需要の増大など、地方自治体の行財政運営を取り巻く環境が厳しさを増す中で、地域の持続的な発展を可能とするため、地方自治体においては、行財政運営の効率と質の向上を図っていくことが強く求められます。
こうした状況を踏まえ、三菱UFJリサーチ&コンサルティング自治体経営改革室では、全都道府県、市区を対象として、自治体経営の実態と課題に関する実態調査を平成28年度より実施しています。
本年度の調査では、昨年度から継続して把握している総合計画、行政評価、成果報酬型の事業制度(SIB、指定管理者制度におけるインセンティブの導入など)、政策形成過程における市民参加の取組に加えて、EBPM、働き方改革を新たに追加し、その実態と課題、今後の取組の方向性などについて把握・分析しました。

<調査結果概要>

■調査対象:全国の全都道府県47団体、全市790団体、東京都特別区23団体、計860団体
■回収数(率):505団体(58.7%)
■総合計画について

  • 法改正に伴う計画構成の多様化が進展している。
  • 基本計画に事業を掲載しない団体が多くを占める一方、7割以上の団体が優先順位の明確化のため重点プロジェクトを設定している。
  • 総合計画のすべての施策に定量指標を設定している団体は55.5%に留まっているが、定量指標を一切設定していない団体の割合は昨年度と比較して低下している。

■行政評価について

  • 事務事業評価は大部分の団体が実施しているが、施策評価は6割に留まっている。
  • アウトカム指標を活用している団体が約4割、外部評価を実施している団体は約5割にとどまるが、評価に住民の意見を反映する取組は昨年と比べやや増加している。
  • 行政評価が総合計画の進行管理に充分に活用されていない。
  • 多くの団体が行政評価について負担に見合う成果が得られていないと感じている。

■ソーシャル・インパクト・ボンド(以下、SIB)について

  • 大規模自治体ほどSIBの導入に関心をもつ傾向がある。
  • SIB導入の克服すべき課題として、適切な評価手法の確立が求められる。特に、事業と成果の因果関係が容易な評価手法の導入や成果水準設定に係るガイドライン作成が解決方策として期待されている。
  • 昨年度と比較すると、適切な事業スキームの構築に関連する課題意識は低下している。
  • SIBの導入によって、行政サービスの質の向上が図られることが期待されている。

■成果報酬型指定管理者制度について

  • 大規模自治体ほど成果報酬型制定管理者制度の導入が進んでいる。
  • 集客が見込まれる施設において、利用料金制を中心とした成果報酬型制度が導入されている。
  • 成果報酬型制度の導入により、事業成果の向上と運営の効率化を同時に実現することが期待されている。

■総合計画策定における市民参加手法について

  • 「ワークショップ・市民討議会」は約6割の団体で実施されており、その内8割強の団体が引き続き実施していきたいと回答している。
  • 「ワークショップ・市民討議会」で提案された意見の活用方法としては、委員会・審議会や所管部課内で議論する際の参考資料として活用される場合が多い。

■エビデンスに基づく政策形成(EBPM)ついて

  • 多くの団体でEBPMに関心はある一方で、現在具体的な取組や検討を行っている団体は1割に満たない。
  • EBPMを推進する上での課題としては、「手法に関するノウハウ・知識が足りない」「事例集など参考になる情報が足りない」と回答する割合が高い。

■働き方改革ついて

  • 時間外勤務時間について過去3年間(平成25年~28年度)の間で「増加している」と回答する割合が「減少している」と回答する割合よりも高い。また、「年次有給取得率」や「男性の育児休暇取得率」については「変わらない」と回答する割合が高い。一方、管理職の女性割合は、「増加している」と回答する割合が高くなっている。

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