さらなる拡張か、衰退か ~英国の現状を踏まえ、我が国のPFIの今後を考える~

2018/06/27 本橋 直樹、大野 泰資
PPP
PFI
英国
官民協働

概要

我が国では、PPP/PFI事業の推進が進められていますが、PFIの母国である英国においては新規のPFI案件は非常に限定的となっており、我が国とは逆向きのトレンドとなっています。そこで、英国のPFIの現状及び制度の背景、最新の議論等について整理をしました。また、英国においては、PFIに対して様々な評価がなされていますが、これらの評価が我が国にも当てはまるのかどうか整理し、我が国の今後のPFIの動向について考察しました。

英国におけるPFIの現状

  • 労働党のブレア政権時代にPFI事業数は大きく増加したが、2007年度をピークに新規PFI事業は大きく減少し、2016年度の新規案件数は1件のみであった。
  • 2012年にPFIに変わるPF2が導入され、①政府による出資、②民間事業者への委託業務・移転リスクの制限、③入札期間の制限等が行われた。
  • 会計検査院にあたるNAO(National Audit Office)は、2018年1月に“PFI and PF2”というレポートを公表し、PFIに関するメリット・デメリットの整理、会計制度との関連等を取りまとめている。

英国におけるPFIの評価

  • メリットとして、予定工期内・予算内での施設整備が実現すること、サービス水準が向上することが挙げられる。
  • デメリットとして、費用増となる可能性があること、契約期間が長期に及び契約変更が自由にできないこと、調達プロセスが長期に及ぶことが挙げられる。
  • 課題として、民間事業者の「過剰利益」、収益率の透明性の欠如、PFIに有利な事業手法選定がなされることが挙げられる。

日本におけるPFIとの比較

  • 英国においてメリットとして挙げられている事項に関し、サービス水準の向上は我が国においても適合する。一方、予定工期内かつ予算内での施設整備は、PFIを用いずとも実現しているものと思料される。
  • 英国においてデメリットとして挙げられている事項に関し、契約変更が自由にできないこと、調達プロセスが長期に亘ることは、我が国においても適合するものの、英国と比較してその度合いは小さい。一方、費用増となる可能性については、我が国においては適合しない。
  • 民間事業者の「過剰利益」については、ファイナンススキームが異なることもあり、我が国においては適合しない。ただし、PFIに有利な事業手法の選定については我が国においても一部適合する。
  • 英国において新規案件数が大きく減少しているからといって、我が国においても同様のことが起こる蓋然性は高くない。

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