治療パターン別にみたがん治療と仕事の両立状況と効果的な支援策に関する分析

2019/05/24 野田 鈴子
医療福祉政策
医療

レポートの位置づけ

●本レポートは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2015年8月に実施した「がん治療と仕事の両立に関する調査」の追加分析の位置づけとなる。当該調査の詳細については、報告書を参照いただきたい。

レポート概要

●近年、がん治療と仕事の両立支援に対するニーズが高まっているが、がんの治療内容は多様であり、効果的な支援は治療内容によって異なると考えられる。そのため、治療パターンによる両立の実態や抱えている課題の差異と、治療内容ごとに有効な職場での対応を明らかにすることを目的として分析を行った。

●治療内容については、休業期間と通院治療の有無の組み合わせから4パターンを設定した。分析の主な結果は以下のとおりである。
・休業が長期化し、かつ化学療法等の通院治療が必要となった場合、職場から離職を促される割合が高まる。
・休業が長期化した場合には、失効年次有給休暇の積立制度など休暇に対する保障に加え、日頃の業務においても残業をなくすことが必要となる。
・通院治療が必要な場合は、出社・退社時刻を柔軟に変更できる仕組みが必要となる。
・長期の休業と通院治療のいずれもが必要な場合には、上記に加えて1日単位の傷病休暇と復職支援に対するニーズが高い。

●治療パターン別の分析結果をふまえ、効果的と考えられる両立支援を以下のとおりまとめた。

治療パターン 効果的な両立支援
①休業1ヶ月未満‐通院治療なし ・周囲の過剰な配慮がかえってストレスになることがあるため、本人の希望をふまえた支援を行う
②休業1ヶ月以上‐通院治療なし ・長期の休業により体力が低下していることをふまえ、勤務時間を短くするなどの調整を行う
・職場全体で残業を削減し、勤務時間を調整しやすい雰囲気を作っていくことも重要
③休業1ヶ月未満‐通院治療あり ・通院治療のスケジュールや、副作用による体調変化に応じて、遅刻・早退や中抜けなど勤務時間を柔軟に調整できるようにする
④休業1ヶ月以上‐通院治療あり ・復職にあたって、試し出勤や短時間勤務など、徐々に職場に戻れるような支援が必要
・状況に応じて仕事内容の変更も検討する

●ただし、ここで示した特徴や必要な両立支援は、あくまで目安にしかすぎないものであり、実際にがんに罹患した社員に対して支援を行う場合には、個別の病状・必要な治療・休業期間等について、主治医からの情報をもとに正確に把握し、産業医らを交えて両立支援計画を作成していく必要がある。

(続きは全文紹介をご覧ください。)

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