■レポートの位置づけ
●本レポートは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2018年・2019年に実施した「介護保険における2割負担の導入による影響に関する調査研究事業」、「介護保険における3割負担の導入による影響に関する調査研究事業」の結果を解説するとともに、今後の改革に当たって議論すべき論点を整理したものである。なお、調査結果の詳細については、報告書を参照いただきたい。
■レポート概要
●介護保険では、介護サービスに係る費用の1割を利用者が負担することが原則となっているが、一部の高所得者については、平成27年8月から2割、さらに平成30年8月から3割へと、利用者負担割合が引き上げられた。本稿では、その影響についてアンケート調査により検証するとともに、今後議論の俎上に載ると見込まれる原則2割負担化について、検討すべき論点を提示した。
●本調査の結果、利用者負担引き上げの影響は、総じて非常に小さかったと考えられる。ただし、この制度変更は、一部の高所得者のみを対象としており、今後、所得によらず原則2割負担とするような場合には、より大きな影響が出る可能性もあるため、慎重な検討が必要である。検討に当たっての論点として、本稿では、利用者負担の意義や社会保険の原理に照らした論点を3つ挙げた。
●1つ目は「サービスを利用する者と利用しない者の負担のバランス」である。利用者負担を倍にすることと、それにより保険料負担を抑制することとが均衡しているか、精緻な推計によって検証することが必要である。2つ目は、利用者負担の引き上げによるサービス利用の「適正化・効率化」のメリットが、副作用である「利用控え」のデメリットを上回るか、である。もし介護サービス消費の階層性が強い場合、デメリットが大きくなる可能性があるため、まずは、所得水準とサービス利用の関係を検証することが必要である。3つ目は、所得水準に応じて給付を削減することの是非である。これは原則2割負担化とは直接関係しないものの、保険料を多く納めた高所得者ほど、給付が削減されるという仕組みは、社会保険に求められる対価性を逸脱しかねないため、この機会に改めて検討されることが望まれる。
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