「老後資金2000万円問題」解決のための「ナッジ」活用の枠組みとイギリスにおけるケーススタディ~高齢期の所得保障を考えるシリーズVII~

2020/03/31 小林 庸平、中山 辰彦
ナッジ・行動科学
医療福祉政策
英国
高齢者
グローバルビジネス

○2019年6月に金融庁金融審議会市場ワーキング・グループが公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」は、いわゆる「老後資金2000万円問題」として世論を賑わせたが、この報告書が指摘した課題は解消されていない。

○この報告書が提起したのは、少子高齢化によって公的年金の給付水準が低下する中で、公助(公的年金)と自助(私的な資産形成)をどのように組み合わせて高齢期の所得を確保していくかが真の課題であり、不足しがちな私的な資産形成をどのように促進していくかだ。

○一方で私的な資産形成は、個人の意思決定に委ねたり、経済的なインセンティブを付与したりするだけでは十分に進まないことも明らかになってきている。そうしたなかで徐々に活用が進んでいるのが、心理的・行動経済学的なバイアスを踏まえた「ナッジ(nudge)」の活用である。

○そこで本稿では、資産形成にまつわる心理的・行動経済学的バイアスを整理した上で、それを解消するためのナッジ開発のフレームワークを紹介する。

○そのうえで、イギリスにおける私的年金政策をケーススタディとして、資産形成促進におけるナッジの活用方法を検討する。イギリスではナッジの活用によって、中低所得層を含む幅広い資産形成が促進されてきた。

○日本でも少子高齢化によって公的年金の給付水準の低下が見込まれるなかで、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)によって私的な資産形成を促進する政策がとられてきたが、遠くない将来に加入者数が頭打ちになる可能性が高い。日本においても、心理学的・行動経済学的バイアスに配慮したうえでナッジを上手に組み合わせる形で私的な資産形成を促進していくことが不可欠だと考える。・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)

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