新型コロナウイルス感染症によって拡大する教育格差独自アンケートを用いた雇用・所得と臨時休校の影響分析

2020/08/21 小林 庸平、西畑 壮哉、横山 重宏、野田 鈴子、池田 貴昭、石川 貴之
教育
変化を捉える【国・地域】

【要旨】

■本レポートの目的

・新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の拡大は、雇用の縮小や所得の低下をもたらすと共に、臨時休校による学校閉鎖によって、教育機会の縮小がもたらされた。これらは、子どもたち、とりわけ貧困世帯の子どもに大きな影響を与えた可能性が高い。本稿では、小学生から高校生の子どもがいる世帯の親2,000人に対して実施した独自のアンケート調査を用いて、新型コロナが雇用・教育の双方を通じて子どもにどのような影響を与えたのかを明らかにする。

■雇用・所得への影響

・新型コロナ拡大の雇用への影響は、就業形態の違いによって大きな違いが生じた。正規雇用や役員の場合、離職・転職等を行った確率は、男性の場合で3.4%、女性の場合で7.2%だが、非正規雇用の場合はそれぞれ26.2%および15.2%まで跳ね上がる。新型コロナはもともと不安定な雇用状態に置かれていた非正規の労働者に大きな影響を与えた。(図表 S- 1)

・新型コロナ拡大前の2020年1月と拡大後の5月の世帯月収の変化を2019年世帯年収別にみると、全体として低所得世帯の方が月収の減少した世帯が多い。もともとの低所得世帯の方が所得面からみても新型コロナの影響をより強く受けている。(図表 S- 2)

・新型コロナの拡大に伴って、在宅勤務・リモートワーク制度を導入する企業が相次いだ。在宅勤務・リモートワーク制度は、新型コロナ拡大後に緊急避難的に導入された場合は効果が薄いが、新型コロナ拡大前から導入されていた場合は、それ以前と同様の働き方を維持できている就業者が増加する。例えば男性の場合、在宅勤務・リモートワーク制度が導入されていないと就業状態を維持できた確率は70.5%に留まるが、2019年以前から制度が導入されていた場合は78.7%まで上昇する。平時から柔軟な働き方の実現が、緊急時の円滑な業務継続にも寄与している。(図表 S- 3)

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