いじめ防止対策推進法を契機に都道府県のいじめ防止対策は変わったか~問題行動調査から見えるいじめ防止対策の進展と、調査の意義と限界。コロナ禍でのいじめの変容の兆し~
【要旨】
2013年、社会総がかりでいじめに対峙していくため、いじめ防止対策推進法が制定された。しかしいじめ防止対策推進法ができて7年が経つ今もなお、いじめ防止対策が不十分であるとの評価も存在する。
本稿では、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下「問題行動調査」という。)に着目し、いじめ防止対策推進法制定直後である平成25年度のデータと、調査時点で最新の平成30年度のデータ等から、各都道府県のいじめ防止対策の基盤(ストラクチャー)、取組(プロセス)、成果(アウトカム)の変化と、その関係性について調査した。
その結果、(1)都道府県のいじめ対応のストラクチャーは整い始めているが、プロセスの状況には都道府県差がある、(2)早期ストラクチャー構築は現在のプロセスに正の影響をもたらす可能性がある、(3)プロセスとアウトカムの関係は強くない、(4)ストラクチャー・プロセスとアウトカムの関係は教員・本人以外からの訴えによる発見と1000人当たりの認知件数について関係性があるとうかがえる可能性があり、他方でいじめ認知件数に占める解消割合については関係性が低い可能性があることが分かった。
本調査の分析結果で、強い関係性を示すことができたものは限定的で、調査データの正確性について懸念が残るものとなった。
今後、(問題行動調査の実施意義の一つである)都道府県や学校現場への啓発的な側面を意識した公表範囲の見直しや、アウトカム指標の複数設定や予防的観点の指標の必要性、予防教育を促進するための継続的研修、現場の実践を実現する環境整備の必要性<をまとめた。
最後に、新型コロナウイルス感染症の影響によって、いじめが変容しつつあることにも言及し、いじめ問題の実情が変わりつつある今、実態把握の調査手法を点検することが必要だと考える。
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