【シリーズ「貯蓄の枯渇を防ぐ」タイトル一覧】
① 高齢期の家計収支を探る
② 知識が鍵を握る高齢期の生活設計
③ 高齢期のお金に関する心配と軽減策・・・<本稿>
- 本稿では高齢期(60~79歳)の世帯の家計収支に関する心配とその軽減策を探ることを主眼に分析を行った。今後大きな支出が必要となる心配として、「医療費」、「介護費」と並んで「長生きに伴う生活費」の確保が挙げられた。自身の健康状態が良いと考えている人は、長生きに伴う生活費の確保を心配している割合が高い。
- 医療費、介護費に関して、民間の医療保険に加入しているのは56.8%、介護保険に加入しているのは8.5%、いずれにも加入していなかったのは41.2%であった。民間の医療保険加入者の44.8%が、「保障内容と保険料は見合っている」と考えている。特に、お金に関する知識が多い人ではその割合が高い。民間の医療保険について、加入の広がりと、保障内容に見合った保険料の納得感が一定程度示されたが、他方で、未加入者の58.0%が「関心がない」としており、課題も残る。民間の介護保険については、加入が十分とは言えない状況にあり、医療保険に比べて「保障内容と保険料の関係がよく分からない」とする回答割合が高い。未加入者の47.4%は「関心はあるが情報収集をしていない」としており、情報提供の充実が課題と考えられる。
- 長生きで必要となる支出(生活費)の増加に対して「何か取り組んでいる」のは44.9%と半数弱であった。60代前半など年代が下がるほど取り組んでいる割合は高い。また、貯蓄高が大きい場合や、知識が多い場合には、取り組んでいる割合は顕著に高くなる。取組内容は、「毎月の支出(消費)額を抑制し、貯蓄額を維持する」が全体の60%程度で最も高い。60~64歳など年代が下がると「より長い期間(高年齢になるまで)働き、貯蓄額を増やす」割合が高くなる。その他、貯蓄高が1,000万円以上の場合や知識が多い場合に、「長生きに備えた貯蓄額を別に取り分ける(高年齢になるまで手をつけない貯蓄額を決める)」の割合が高くなる。知識が多いと「生涯年金など長生きに備えた金融商品を購入・保有する」の割合が高く、長寿による生活費の増大に複数方法で対応する姿がみられる。
- 長寿に伴う生活費の確保方法への考え方をみたところ、長寿年金が合理的と考える人が40%程度いることが分かった。平均寿命、あるいは平均寿命+5年までの有期年金(早期の死亡の場合は残額を遺族が受給)よりも、自身の死亡まで受給できる長寿年金を受給することを選択する割合が高い。アンケートの設問は非常に単純化されているものの、長寿年金への期待が高い結果となった。関連して行った遺産に関する意識をみても、積極的な遺産動機は弱く、長寿に対する自身のための資金確保への意識が第一になっている。
- 高齢期に必要なお金に関する知識については、外部の講習や研修、書籍等での自己学習経験の割合は低い状況にある。お金に関する基本的な知識は、高齢期の適切で合理的な支出の実現に非常に影響しており、今後、関連する知識を学ぶ機会の提供は非常に重要である。自己学習経験者が、最も知りたいものとして「長生きに備えた金融資産の保有や使い方」を挙げる割合が18.3%で最も高く、長寿化が進む中での生活費の確保への関心度が高いことが分かる。
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