2020年度東海3県主要集客施設・集客実態調査~新型コロナウイルス流行に伴う営業縮小や人々の活動自粛により9割を超える施設で集客数減少、 密を避ける生活スタイルの浸透でレジャーも屋外の志向に~
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(本社:東京都港区 代表取締役:村林 聡)は、「2020年度東海3県主要集客施設・集客実態調査」(東海地方の主要集客施設へのアンケート調査、21年5月実施:78施設が回答)をもとに、2020年度(20年4月~21年3月)の集客実態を分析しました。
尚、今年度の調査では、新型コロナウイルス感染症流行(以下、新型コロナ)の影響を鑑み、年度を3つの期間(①20年4月~5月、②20年6月~12月、③21年1月~3月)に分けた集客状況の把握も行いました。
【結果概要】
■各施設の集客数の状況
・「ナガシマリゾート」(三重県桑名市)が、997万人*と15年連続でトップ。新型コロナによる人々の活動自粛が影響し、特に3世代家族の来訪者が減少。対前年度比で集客数は35.7%減となった。
*「ナガシマリゾート」は年度値(2020年4月~2021年3月)ではなく、年間値(2020年1月~12月)
・ 2位は「刈谷ハイウェイオアシス」(愛知県刈谷市)で、約531万人。新型コロナに伴う営業範囲の縮小や県をまたぐ移動自粛、団体旅行の減少等が影響し、集客数は対前年度比34.5%減となった。
・ 3位は約286万人の「河川環境楽園」(岐阜県各務原市)で、新型コロナによる人々の活動自粛、臨時閉園や夜間イベント中止に伴う営業時間短縮(夜間開園の中止)等が影響し、対前年度比38.3%減となった。
・ 4位は約238万人の「中部国際空港セントレア」(愛知県常滑市)で、対前年度比71.9%減となった。航空旅客は集計対象外であるものの、航空旅客数の大幅な減少(対前年度比84%減*)は航空旅客に付帯する来港者(送迎者等)の減少をもたらし、集客減に影響した。また、イベントの中止や店舗の営業時間短縮・休業、隣接する愛知県国際展示場 Aichi Sky Expoのイベント開催制限等も集客減の要因となった。
*出所:中部国際空港セントレアウェブサイト「2020年度利用実績」(2021年5月25日現在の暫定値)
・ 5位は約225万人の「JAあぐりタウンげんきの郷」(愛知県大府市)で、新型コロナによる営業範囲の縮小(緊急事態宣言による一部施設の休業)等が集客減の要因となった。しかしながら、外出自粛によって家庭での食事機会が増加したことによる、農産物をはじめとした食料品購買ニーズ増や、地元行政による商品券配布等が集客に好影響を与えたこともあり、農産物等の産直品を取り扱う同施設は、対前年度比は7.6%減と、他施設と比べて減少幅は小さかった。
■対前年度比の傾向
~9割を超える施設で減少、新型コロナによる営業範囲の縮小や人々の活動自粛が集客減に大きく影響~
・ 対前年度比では、76施設*中、74施設(97.4%)が減少し、増加した施設は2施設(2.6%)のみとなった。新型コロナによる営業範囲の縮小(営業日数、営業時間、営業エリア等)や人々の活動自粛が集客減に影響した。
*前年度の数値と比較可能な施設
・ 対前年度比の状況を期別に見ると、新型コロナに伴う1回目の緊急事態宣言発令期間を含む、20年4月~5月は、対前年度同期比増となった施設は57施設*1中、1施設(1.8%)のみであった。おおよそ1回目の緊急事態宣言解除後、2回目の緊急事態宣言発令までの20年6月~12月*2では、72施設*1中、11施設(15.3%)で対前年度同期比増となっており、うち8施設が公園・遊園施設を含む施設であった。概ね2回目の緊急事態宣言発令期間と重なる21年1月~3月は、72施設*1中、24施設(33.3%)で対前年度同期比増となり、20年6月~12月と同様、公園・遊園施設を中心に増加した。
*1前年度の数値と比較可能な施設、期間中全て休業・休館した施設は含まない
*2愛知県独自の緊急事態宣言期間(8月6日~8月24日)を含む、Go Toトラベルキャンペーン事業実施期間
(7月22日~12月28日まで)を含む
・ 増加率1位は、「東三河ふるさと公園」(愛知県豊川市)、2位は「豊田市鞍ケ池公園」(愛知県豊田市)で、新型コロナによって余暇の過ごし方が限定される中、身近で密を避けながら過ごすことができる屋外空間として選ばれたとみられる。
・ 対前年度比の減少率が比較的抑えられている施設は、屋外型施設、公園等の広い屋外のスペース、産直施設を有するといった特徴がある。特に公園はステイホームや在宅勤務による運動不足解消・健康増進目的での利用があったこと、産直施設については、新型コロナによって家での食事機会が増加したことが要因となっていると考えられる。
・ 「日本中央競馬会 中京競馬場」(愛知県豊明市)、「バンテリンドーム ナゴヤ」(愛知県名古屋市)、「名古屋市国際展示場」(愛知県名古屋市)といった、例年大規模催事が開催される施設では、新型コロナによるイベント開催制限や入場制限が集客減に大きく影響した。
・ 「志摩マリンランド」(三重県志摩市)は、新型コロナによる人々の活動自粛や団体客の減少が集客に悪影響をもたらしたものの、閉館前(21年3月末に閉館)の駆け込み需要もあり、集客数は対前年度比1.1%減に抑えられた。
■新型コロナがもたらした影響、旅行スタイル・レジャー行動の変化について
◇団体旅行の減少が集客に打撃
・ 約8割(84.2%)の施設がコロナ流行による団体旅行の減少が集客に悪影響をもたらしたと回答しており、「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」(岐阜県各務原市)や「かねふくめんたいパークとこなめ」(愛知県常滑市)、「花フェスタ記念公園」(岐阜県可児市)等これまで団体客の利用が多かった施設において特に悪影響をもたらした。
◇従来、訪日外国人旅行者の占める割合が高かった施設では海外からの渡航制限の影響大
・ 海外からの渡航制限による訪日外国人旅行者の大幅な減少により、「名古屋城」(愛知県名古屋市)や「飛騨の里」(岐阜県高山市)、「新穂高ロープウェイ」(岐阜県高山市)等、これまで訪日外国人旅行者が集客数に占める割合の高かった施設には打撃となった。
◇修学旅行の中止・延期は約6割の施設で集客に悪影響も、一部では行き先変更によって利用を取り込んだ施設も
・ 新型コロナによって修学旅行を中止・延期するケースが多くみられ、約6割(55.6%)の施設で集客に悪影響をもたらした。
・ 一方、行き先が近場に変更されたことで、「鳥羽水族館」(三重県鳥羽市)、「伊賀流忍者博物館」(三重県伊賀市)、「飛騨の里」(岐阜県高山市)等の一部施設ではこれまでに利用のなかった学校の利用がみられた施設もあった。
◇家での食事機会増加によって産直施設へのニーズが高まる
・ 活動自粛やテレワークによって家での食事機会が増加したことにより、野菜をはじめとする食料品をお得に購入することができる産直施設のニーズが高まっており、「JAあぐりタウンげんきの郷」(愛知県大府市)、「碧南市農業活性化センターあおいパーク」(愛知県碧南市)、「農業文化園・戸田川緑地」(愛知県名古屋市)等の産直施設を有する施設を中心に、家での食事機会の増加が集客に好影響となった施設もあった。
◇密を避けられる屋外が選ばれる傾向に
・ 新型コロナにより密を避けた生活スタイルが浸透しており、「東三河ふるさと公園」(愛知県豊川市)、「養老公園」(岐阜県養老町)等の大規模な公園や、「とだがわこどもランド」(愛知県名古屋市)等、屋外型施設を有する施設の集客にはプラスに働いている部分もあった。近年のキャンプをはじめとするアウトドアレジャーへの関心の高まりも屋外でのレジャーの選択を後押ししていると思われる。
◇移動自粛によりレジャーは近場で楽しむ傾向に
・ 県をまたぐ移動自粛は、約9割(88.9%)の施設で集客に悪影響をもたらした。また、約9割(90.8%)の施設で「他県からの来訪者」が減少しているとともに、約8割(75.8%)の施設で帰省自粛が集客に悪影響をもたらしていること、約7割(70.2%)の施設で「3世代家族」の来訪が減少していることから、お盆などの帰省自粛が集客減に与える影響も大きいと思われる。
・ 一方、約3割(32.3%)の施設で「地元客」が増加しており、新型コロナの影響で、レジャーは近場で楽しむ傾向がみられる。
◇SNSでの情報発信の重要性がより一層高まる
・ 約6割(63.1%)の施設で「SNSでの情報発信」が集客に好影響をもたらしたと回答している他、約5割(46.2%)の施設でSNSでの口コミを見た来場者が増加しており、昨年度調査と比較してもその割合は増加している。未曾有の新型コロナの中で、人々が余暇をどこでどのように過ごすべきか模索する中、特にSNSでの情報発信の重要性とその効果は高まっているといえる。
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