気候変動対策に関する国家間のインタラクティブな透明性プロセス~気候変動行動の強化に資する国家間コミュニケーションプロセスの構築に向けて~

2021/09/16 森本 高司
グローバルビジネス
気候変動

1. はじめに

気候変動は、大気中に蓄積された温室効果ガスに起因する。ゆえに、限られた国だけが温室効果ガス排出量を削減しても十分ではなく、全ての国が排出削減努力を行い、世界全体の排出量を削減していく必要がある。各国は気候変動枠組条約およびパリ協定の下でそれぞれ中長期の排出削減目標を設定し、取り組みを加速している状況にあるが、各国が排出削減対策の実施計画や排出削減目標の達成に向けた進捗に対する説明責任を果たすことは、国家間の信頼関係を構築し、世界全体で気候変動に協調して取り組んでいく上で極めて重要である。

気候変動枠組条約の下で各国は、自国の温室効果ガス排出量や排出削減対策の実施状況等を定期的に取りまとめ、気候変動枠組条約事務局に報告する義務がある。この報告された情報について、各国が口頭で説明を行い、国家間で質疑応答を行うという、情報の透明性確保のためのインタラクティブなプロセスが設けられている。これは、報告書の提出という一方通行のアプローチだけではなく、口頭でのプレゼンテーションと国家間の質疑応答を行うことで、各国の取り組み状況をより可視化するとともに、国家間の相互信頼の向上を目的として設立・運用されているものである。

本稿では、この気候変動対策に関する国家間のインタラクティブな透明性プロセスについて、先進国に対して実施されている多国間評価(Multilateral Assessment : MA)の内容を分析した上で、各国における気候変動対策の強化に資するようなコミュニケーションプロセスのあり方について考察を試みたい。

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