商業地における店舗の新陳代謝の最新動向を捉える~ポストコロナ時代における地域政策の展望 シリーズ~

2022/06/14 鈴木 淳、森 春樹
まちづくり
サービス業
地域産業
産業振興

はじめに

2021年1月1日を評価時点とする路線価が国税庁より発表1され、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、「コロナ禍」という)の影響で観光地や商業地等の路線価は軒並み前年比マイナスに転じ、路線価変動率の全国平均が6年ぶりに前年を下回る結果となるなど、観光地や商業地の厳しい現状が路線価を通じて浮き彫りとなった。

観光地と商業地の両面の特徴を持つ秋葉原(東京都千代田区)は、東京あるいは日本を代表する活力のある商業集積地としてしばしば注目される。戦後、闇市時代にラジオ部品を専門に扱う商店が集積したことを契機に現在の秋葉原の原型は作られた。その後、高度経済成長期の家電量販店の出店、1980年代以降のパソコンブームによるパソコンショップの展開等によって、専門店の集積地としての特徴が顕著となり、パソコン文化から派生したゲームやアニメ等のサブカルチャーが台頭する等、時勢に応じて様々な業態を地域内に重層化させてきた。近年においては、そうして生まれた固有の商業景観を求める訪日外国人のニーズにも合致し、観光地としての側面も生まれ、さらなる活力を見せる都市となった。

こうした秋葉原においても、2020年以降のコロナ禍による入国制限や人流抑制等の影響によって、訪日外国人や国内からの来訪者が減少し、商業地としての活力の喪失が危惧され、これまで都市を形づくってきた専門店や飲食店の閉店が相次いでいると取り上げられることも少なくない。しかし、相次ぐ閉店の要因は、必ずしもコロナ禍による来訪者の減少によるものだけとは言い難い。戦後闇市以降70年以上が経ち、高度経済成長期に一斉に建てられたテナントビルは築古化によって、建替えのタイミングを迎えているし、賃貸借契約の満期による賃貸の終了等もあるだろう。また、コロナ禍の以前から、ECサイトでの購買行動が一般化してきていることなども一因だろう。

コロナ禍によって、商業地にどのような変化が起きたのか、秋葉原という1つの商業地を対象に、テナント単位で詳細にその状況を把握し記録することで、直近のコロナ禍における商業地の実態を明らかにし、今後求められる支援や、商業地に求められる視点を示唆する。

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1 国税庁HP 財産評価基準書

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