不連続の時代における地域での土地利用・管理政策~土地利用・管理に係る法制度の転換から見る今後のあり方~

2022/09/01 阿部 剛志
まちづくり
土地利用
地域産業
産業振興
所有者不明土地

2020(令和2)年春先から、わが国はコロナ禍に見舞われ、その対応に追われているこの2年余であるが、この間に私たちの生活の基盤となる「土地」の利用・管理のあり方について、その根幹を規定する法制度が相次いで改正・成立した。

本稿では、これらの法制度の概要を紹介するとともに、その背景にある社会問題を「不連続」というキーワードから読み解き、今後の土地利用・管理においてより重要な役割が期待される地方公共団体が「不連続」の時代に対応していくための方策を提案する。

コロナ禍で静かに進む土地利用・管理法制の転換

  • 2020(令和2)年に土地基本法が改正され、土地政策の理念に管理や地域を重視する視点が追加された。この理念を具体化する法制度も2021(令和3)年の民事基本法制の見直しにおいて実装された。
  • 今般の土地基本法改正と民事基本法制の見直しにおける地域重視・管理重視の基本理念は、明治時代以降長年にわたり、わが国の土地政策の基本にある土地所有者(土地所有権)を絶対視する考え方とは相反する部分も想定され、私人(個人)の財産権に関わるセンシティブな領域に踏み込んだものと評価できる。

土地利用・管理法制転換の背景にある社会問題 ~「不連続」をキーワードとした考察~

  • 土地基本法改正や民事基本法制の見直しにおいて、個人の財産(財産権)を制限するほどの効力を持つ法制度を設けなければならなかった理由について、「不連続な過少利用化の広がり」と「不連続な土地利用需要の高まり」の両側面があげられる。
  • 前者の側面は多死社会を迎えてより深刻化していくことが見込まれるほか、後者の側面を高める災害発生リスクについて軽減する見込みを立てることは難しい状況にあり、所有者不明土地の所有権(私権)を制限してでも地域において土地利用を推進する必要性は引き続き高まっていくと考えられる。

不連続の時代における地域での土地利用・管理政策のあり方

  • 地域において必要な土地利用を所有者不明土地も含めて推進していくための法制度は今般の土地基本法・民事基本法制の見直しによって出揃い、今後は各地域において制度を適用していく段階に移る。
  • 制度利用や適用に関する地方公共団体の長の権限が拡大しているが、実際には地方公共団体として制度利用・適用を判断できる政策的根拠づくりが重要となるため、土地利用計画の策定などに工夫が求められる。
  • 所有者不明土地関係法制度の適用は、地方法務局や地方裁判所などがその必要性を判断することになるが、その判断基準として地方公共団体等のまちづくりの方針が参考にされる可能性が高い。既存の枠組みも活用し、地方公共団体と関係諸機関・専門家との連携・情報共有体制を構築していくことが求められる。

(続きは全文紹介をご覧ください)

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。