2022年度東海3県主要集客施設・集客実態調査~行動制限のない連休やイベントの再開・規模回復で、8割強の施設が対21年度比集客数増 2割強の施設でコロナ前の水準を上回る~

2023/05/25 加藤 千晶、内田 克哉、鈴木 良美
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本調査は、東海3県(愛知県、岐阜県、三重県)の主な集客施設における2022年度(22年4月~23年3月)の集客実態を把握するため、23年4月~5月にかけて各施設に対してアンケート調査を実施したもので、75施設から回答を得た。

なお、今年度の調査では、新型コロナウイルス感染症流行(以下、新型コロナ)前()との状況比較のため、2019年度、2021年度、2022年度の3ヵ年度分の集客状況を掲載している。
新型コロナ防止のための「新型コロナウイルス対策の特別措置法」は2019年度(20年3月)に成立したが、本調査では1回目の緊急事態宣言の発出(20年4月)前の2019年度を「新型コロナ前」と設定した。

【結果概要】

各施設の集客数の状況

  • 「ナガシマリゾート」(三重県桑名市)が、約1,200万人と17年連続でトップ。繁忙期であるゴールデンウィークや夏期休暇・冬期休暇に行動制限がなかったことが特に好影響となり、対21年度比で13.0%増となった。一方、新型コロナによる外出自粛傾向の時期もあったことから、対19年度比では22.6%減と、新型コロナ前の水準には戻っていない。
    「ナガシマリゾート」は年度値(22年4月~23年3月)ではなく、年間値(22年1月~12月)
  • 2位は「刈谷ハイウェイオアシス」(愛知県刈谷市)で、約737万人。行動制限のない繁忙期の他、施設でのイベント再開・規模回復や、団体旅行の回復等が好影響となり、対21年度比で16.0%増となった。対19年度比では9.0%減に留まり、ほぼ新型コロナ前の水準まで回復した。
  • 3位は約481万人の「中部国際空港セントレア」(愛知県常滑市)で、行動制限緩和による国内旅客回復に伴う送迎の増加や、空港に遊びに来る人の増加が好影響をもたらし、対21年度比で76.2%増となった。ただし、新型コロナ再拡大により人々が活動自粛した時期もあったことから、対19年度比では43.1%減と新型コロナ前の水準には戻っていない。
    航空旅客数(通過客を除く)は、対21年度比約112.5%増、対19年度比52.2%減。(出所:中部国際空港セントレアウェブサイト「2022年度利用実績」「2021年度利用実績」「2019年度利用実績」(2019年度値は23年4月25日現在の暫定値)より算出)なお、航空旅客数は「中部国際空港セントレア」の集客数の集計対象外である。
  • 4位は約412万人の「河川環境楽園」(岐阜県各務原市)で、飲食・テイクアウト店の新規オープンや、施設でのイベント再開等が好影響となり、対21年度比で13.6%増となった。一方、夏期に人気の幼児用遊具「わんぱくフィールド水遊び」が運営休止となったことや、豪雨により園内施設が損壊したことに伴い一部駐車場の利用規制が行われたこと(いずれも継続中)が悪影響をもたらし、対19年度比では11.0%減となった。
  • 5位は約317万人の「バンテリンドーム ナゴヤ(旧 ナゴヤドーム)」(愛知県名古屋市)で、プロ野球開催時の観客入場制限撤廃が特に好影響となり、対21年度比で163.7%増と大幅に増加した。一方で、対19年度比では34.5%減と、新型コロナ前の水準には戻っていない。

対21年度比の傾向~8割強の施設で増加~

  • 対21年度比では、72施設中、61施設(84.7%)で集客数が増加し、11施設(15.3%)で減少した。集客施設の繁忙期にあたるゴールデンウィークや夏期・冬期休暇期間に新型コロナによる行動制限がなかったことや、施設でのイベント再開・規模回復等が集客数増に寄与した。
    過年度の数値と比較可能な施設
  • 増加率1位は、163.7%増の「バンテリンドーム ナゴヤ(旧 ナゴヤドーム)」(愛知県名古屋市)で、上述の通り、プロ野球の観客入場制限撤廃が好影響となった。同様のケースとしては「日本中央競馬会 中京競馬場」(愛知県豊明市)も入場制限が緩和されたことが好影響となり、対21年度比104.3%増と大きく増加した(増加率第6位)。
  • 増加率2位は、122.5%増の「名古屋城」(愛知県名古屋市)で、城内イベントの開催が好影響となった。3年ぶりとなった夜間特別公開も集客数増をもたらしたと考えられる。
  • 増加率3位は、109.9%増の「名古屋市国際展示場」(愛知県名古屋市)で、イベント再開・規模回復等に加え、2022年10月に“新第1展示館”が開業したことが好影響となった。
  • 「トヨタ産業技術記念館(愛知県名古屋市)や「でんきの科学館」(愛知県名古屋市)等、新型コロナ前は社会科見学や修学旅行といった学校行事の受入が一定数を占めていた施設では、学校行事の回復が好影響となり、対21年度比で増加した。

対19年度比の傾向~2割強の施設で増加~

  • 対19年度比では、73施設中、18施設(24.7%)で増加しており、新型コロナ前の水準を上回った。55施設(75.3%)では新型コロナ前の水準に戻っていないものの、対19年度比で増加した施設の割合は、21年度調査結果(9.7%※※)から増加しており、回復基調が見てとれる。
    過年度の数値と比較可能な施設
    ※※今年度調査と回答施設・数が異なることを留意されたい(以下、過年度調査は同様)
  • 増加率1位は、2019年8月末に開業した「愛知県国際展示場  Aichi Sky Expo」(愛知県常滑市)で、施設でのイベント再開・規模回復やビジネス出張の戻り等が集客に好影響をもたらした。
  • 増加率2位は「愛・地球博記念公園」(愛知県長久手市)、増加率3位は「豊田市鞍ケ池公園」(愛知県豊田市)で、いずれも施設内に話題性の高い新規施設がオープンしたことが特に影響したと思われる。
    「愛・地球博記念公園」(愛知県長久手市)は2022年11月に“ジブリパーク”が第一期開業、「豊田市鞍ケ池公園」(愛知県豊田市)は2022年3月に“フォレストアドベンチャー豊田鞍ケ池”がオープン
  • その他、全国旅行支援や、集客力の高い企画・イベント等の開催が遠方からの集客につながり、対19年度比増となったと思われる施設も見られた。

集客数への影響要因について

好影響の要因

  • 約9割(85.7%)の施設が「行動制限のないゴールデンウィークや夏期・冬期休暇」は集客に好影響をもたらしたと回答した。22年度は、新型コロナ後はじめて行動制限のないゴールデンウィークや夏期・冬期休暇を迎え、集客数回復を後押しした。また、帰省再開の動きも見られ、約8割(75.8%)の施設が「帰省再開」を好影響と回答した。「他県からの来訪者」も約8割(78.3%)の施設が増加したと回答し、人々の観光行動の活発化・広域化が見てとれる。
  • 約8割(82.4%)の施設が「施設からのSNSでの情報発信」は集客に好影響をもたらしたと回答している。年々この割合は高まっており、SNSでの情報発信による集客増への効果は引き続き増大傾向にある。「SNSでの口コミを見た来訪者」が増加したと回答した施設は約8割(76.6%)とこちらも年々割合が上昇※※している。来訪者にSNSへの投稿を促す仕掛け作りにも期待される。
    20年度調査結果:63.1%、21年度調査結果:73.5%
    20年度調査結果:46.2%、21年度調査結果:68.3%
  • 新型コロナで休止・規模縮小していたイベントの再開も見られ、約8割(77.9%)の施設が「施設でのイベント再開・規模回復」は集客に好影響をもたらしたと回答した。21年度調査結果では「制限の緩和(入場人数・イベント開催要件等)」が好影響と回答した施設は約6割(58.5%)であったことから、イベント開催による集客数回復の兆しも見られる。
  • 約7割(73.5%)の施設が「団体旅行の回復」は集客に好影響をもたらしたと回答した。特に、「飛騨の里」(岐阜県高山市)や「犬山城」(愛知県犬山市)、「名古屋港水族館」(愛知県名古屋市)、「リニア・鉄道館」(愛知県名古屋市)等、新型コロナ前に団体客の利用も多かった施設でその傾向が見られた。また、新型コロナ前に訪日外国人旅行者の来訪も目立った「飛騨の里」(岐阜県高山市)や「犬山城」(愛知県犬山市)等では、訪日外国人旅行者の入国制限緩和も集客増をもたらした。

悪影響の要因

  • 21年度は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が複数回発出されていたため、21年度調査結果においても新型コロナに起因する項目(施設の営業範囲の縮小、先行きが不透明な新型コロナの感染状況、新型コロナによるレジャー自粛の風潮等)が集客に大きな悪影響となっていたが、22年度は7月に新型コロナ第7波が発生したものの、緊急事態宣言等の発出がなかったことから、新型コロナに起因する項目で目立って悪影響となった項目は見られなかった。
  • 一方で、約5割(52.4%)の施設が「猛暑」が集客に悪影響となったと回答しており、繁忙期である夏期に猛暑となったことは屋外型施設を中心に悪影響をもたらしたと言える。
  • 円安や原材料費、エネルギーコスト高騰等の社会的な要因も影響し、約4割(42.4%)の施設が「物価高」は集客に悪影響をもたらしたと回答した。

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