令和4年度 自治体経営改革に関する実態調査報告

2023/07/28 土方 孝将、鈴木 淳、大塚 敬、沼田 壮人
地方自治体
自治体
総合計画
自治体経営
行政

地方公共団体においては、常に社会の潮流や将来動向を捉え、自律的な自治体経営が求められています。これに対する視座を地方公共団体に提供するため、三菱UFJリサーチ&コンサルティング自治体経営改革室では、全都道府県、市区を対象として、自治体経営の実態と課題に関する調査を平成28年度より実施しています。

昨今、人口減少と高齢化を背景とした税収の伸び悩みや福祉需要の増大、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による新たな市民ニーズの増加、デジタル田園都市国家構想や自治体DX、SDGsといった新たな潮流への対応など、地方公共団体の行財政運営を取り巻く環境は大きく変化しています。これからの時代に即し、持続可能な自治体経営に向けては、これまで以上に行財政運営の効率と質の向上を図っていくことが強く求められます。

こうした背景を踏まえ、本年度は総合計画、デジタル田園都市国家総合戦略への対応、行政評価、政策形成過程における市民参加、エビデンスに基づく政策形成(EBPM)、自治体のデジタル化(DX)、自治体SDGs、新型コロナウイルス感染症に対して行った対応策の実態と課題について把握・分析しました。

調査結果概要

■調査対象:全国の全都道府県47団体、全市792団体、東京都特別区23団体、計862団体

■回収数(率):420団体(48.7%)

■総合計画について

  • 総合計画の構成は3層が多数派であるが、2層とする割合が上昇している。
  • 8割弱の団体が重点プロジェクトを設定しており、うち4割強が積極的な予算付けを行うと位置づけている。
  • すべての施策に目標値を設定している割合が6割となっており、定量的な目標値を設定していない割合は平成28年度以降減少傾向にある。
  • 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と「総合計画」を一体化する団体は増加傾向にある。
  • 約9割が審議組織を設置しており、学識者、各種団体代表などで構成する団体が多い。

■行政評価について

  • 総合計画記載の事務事業評価は全部実施が5割、予算概要説明書に掲載の事務事業については3割強となっている。
  • 定量的な評価指標について、政策評価は7割弱、施策評価は9割弱、事務事業評価では8割弱が設定している。
  • 行政評価を予算編成に原則として反映している割合は上昇しており、行政評価の結果を予算編成に活用していない割合は減少している。
  • 行政評価の課題について、内部評価に係る事務作業の負担が大きいとする団体が依然として多い。

■総合計画策定における市民参加手法について

  • 総合計画策定時に「ワークショップ・市民討議会」を実施している割合は6割強に留まり、過年度調査と比較して減少している。
  • 提案された意見は、将来像・都市像・キャッチフレーズの策定に活用される場合が多い。
  • 提案された意見は、そのまま計画に記載されることは少なく、委員会・審議会や所管部課内の議論・検討における参考資料として活用される場合が多い。
  • コロナ禍におけるワークショップの開催は、対面開催が多く、感染症対策も緩和方向に進んでいる。
  • グラフィック・レコーディングの知名度は半数を超えているが、導入状況はまだ少ない。

■エビデンスに基づく政策形成(EBPM)について

  • EBPMへの関心は年々高まっているものの、具体的な検討を進めていない団体は7割弱である。
  • EBPMを推進しているあるいは具体的な検討を進めている団体において、成果指標の前後比較を行う団体は8割弱、時系列比較を行う団体は6割弱である。
  • 行政評価の仕組みにEBPMを組み込む団体が4割強、ロジックモデルを作成している団体が4割となっている。
  • EBPM推進に向けては、「手法・ノウハウの獲得」「庁内の理解不足・人手不足」が課題として挙げられている。

■自治体におけるDXの推進状況について

  • 大規模団体が先行して官民連携データ活用推進計画を策定している。
  • ビッグデータを活用している団体は限られるが、大規模団体では半数程度が既に活用している。
  • ビッグデータ活用で解決したい課題として「観光振興」、「医療・介護の高度化・効率化」が多く挙げられている。

■自治体SDGsの取組について

  • SDGsに関する取組を「実施している」と回答する割合は75.0%で前年度から15.0ポイント増加し、「具体的な検討を進めている」と回答する割合を合わせると85.2%に達している。
  • 取組内容としては、SDGsの概念や取組を既存の計画の中に盛り込む事例が94.7%に達しており、基本計画、まち・ひと・しごと創生総合戦略に反映する団体が多い。また、「目標達成に向け、具体的な事業を実施する」と回答する割合は3年連続で上昇している。
  • 取組を推進する上での課題は、人手不足を指摘する団体が増加し、52.4%で最も多くなる一方、SDGsに関する「知識の不足」の割合は低下した。

■新型コロナウイルス感染症への対応策について

  • 市民向けの行政サービスの見直しは、申請手続きのオンライン化、各種手数料支払いのキャッシュレス化、市民への独自の交付金の支給がそれぞれ6割前後を占める。
  • 事業者向けの支援は独自の交付金が70.2%で最も多く、感染予防対策の認証が66.7%、新しい生活様式に対応した新事業の資金支援が61.2%となっている。
  • コロナ禍の影響により1/3の団体で出生率が低下しており、母親となる世代の女性人口の減少も30.4%、婚姻率低下も21.7%の団体で見られる。その対策は「安心して乳幼児を育てられる環境確保に係る取り組み」が最も多く76.2%を占めている。
  • 職員の在宅勤務は、希望する職員に対して許可をしている団体が65.5%を占め、そのうち74.7%が行政端末で団体のネットワークに接続し、この割合は前年度から13.2ポイント上昇しており、在宅勤務の環境整備が進んでいる。
  • web会議は73.6%が所定の共用PCのみで利用可能だが、すべての職員のPCで可能とする団体の割合が高まっている。
  • 感染症対策において最も把握・分析したいことは市民の行政サービスニーズ変化であり、90.0%を占めている。

(続きは全文紹介をご覧ください)

執筆者

facebook x In

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。