日本では、2023年、外国人技能実習制度の見直しや特定技能2号の対象分野拡大など、低・中熟練外国人労働者受入れに向けた動きがあった。海外に目を向けると、日本と同じく少子高齢化・労働力不足に直面する韓国・台湾でも日本と同様の動きがみられている。そこで本稿では、今後の日本における外国人労働者受入れ政策の検討に資するべく、外国人労働者の受入れ競合国となる韓国、台湾における低・中熟練の外国人労働者受入れの政策動向を整理する。
【要旨】
日本・韓国・台湾の経済水準等の比較
- 1人あたりGDPをみると、長年日本が韓国、台湾を大きく引き離していたが、近年急速に差が縮まり、2023年時点では3か国とも33,000USドル前後で、日本の経済的優位性はほとんどなくなった。
- 低・中熟練外国人労働者の平均月給のデータをみると、韓国>日本>台湾の順になっている。
韓国の動き
- 低熟練外国人労働者を受け入れる一般雇用許可制(在留資格:非専門就業(E-9))の年間受入れ上限はここ数年拡大傾向にあり、2024年は過去最大の16.5万人を予定している。
- 一般雇用許可制について、2023~24年にかけて、対象業種の拡大、家事労働者の試験的導入、派遣形態の許容、留学生からE-9への変更許可などに取り組むとされる。特に、制度開始以来、製造業や建設業など5業種に限定・堅持してきた対象業種を拡大し、飲食店などサービス業で受入れが認められることは大きな変更点である。
- 中熟練外国人労働者について、「熟練技能人材」点数制度の見直し(2023年9月)、及び、年間受入れ上限の大幅拡大(過去最大の35,000人、2023年)や、「準熟練人材」受入れルートの新設(検討中)の動きがみられる。従来、韓国では外国人労働者の受入れにあたり、中長期的な育成の観点が制度的にほぼみられなかったが、「段階的な在留資格昇級システムを推進する」という政府の掛け声のもと、中熟練人材の確保に向けて、国内外で育成・訓練に注力することが目指されている点は、特に注目される。
台湾の動き
- 2023年6月から低熟練外国人労働者の受入れを拡大する制度を開始した。製造業の受入れ枠の拡大、一般民間建設業や林業の新規受入れ開放、農業の受入れ人数倍増など、積極的な受入れ姿勢がみられる。
- 中熟練外国人労働者について、2022年4月、移工留才久用方案に基づき、賃金及び技能要件を満たした人材に対して長期の在留を認める制度を開始した。2030年までに現在の外国人労働者数の約1割弱にあたる8万人の受入れを目標に設定し、制度開始から1年4か月で約1.5万人に達している。
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