1.政府債務の何が問題か
政府債務が日本における最大の財政問題であることは疑いの余地がないだろう。普通国債の累積残高は2021年度時点で991兆円であり、2023年度末には1,068兆円に上ると見込まれている。一般政府[ 1 ]で見ると、2023年時点で普通国債の累積残高は、対GDP比258.2%であり、これはG7で最悪の水準となっている[ 2 ]。一般会計における政府債務には建設国債と特例国債がある。建設国債は、道路や建物の建設等に伴って発行されるが、これらの施設が20年以上便益を提供することから、将来の納税者が負担することに合理性があると考えられてきた。一方、特例国債は赤字国債とも呼ばれ、その年の国家公務員の給与や施設運営費などに充てられるため、10年後、20年後の納税者が負担することに合理性がないと捉えられている。その意味で特例国債がより深刻な問題であり、近年これが大きく伸びてきている。
国債発行を概観すると、当初予算でこれが始まるのが1966年度であり、特例国債の発行は1976年度にスタートする。図表1は当初予算における特例国債と建設国債の新規発行額の推移であるが、合わせて新規国債依存度[ 3 ]も掲載している。特例国債の発行が1976年度に始まると、新規国債依存度も30%に跳ね上がり、1979年度には40%に上昇する。1980年代に入ると、これらの数字は低下し、1990年度から1993年度の4年間は特例国債の発行を回避している。だが、回避できたのはこの4年だけで、その後は再び増加に転じ、特に2000年度以降は20兆円を超える水準で推移している。一方、建設国債は1999年度の16.5兆円から減少し、近年は6兆円を維持している。新規国債依存度は特例国債の発行額と連動しながら1999年度に急増すると、2000年度以降30%から50%で変動してきた。2023年度当初予算では特例国債35.6兆円に対し、建設国債は6.6兆円、新規国債依存度は31.1%である。このように一般会計では、極めて高い水準で国債発行が維持されており、債務が債務を呼ぶ、複雑な様相になってきている。
[ 1 ]一般政府とは政府機関、地方公共団体、社会保障基金を統合した概念である。
[ 2 ]財務省HP「普通国債残高の累増」https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a02.htm、「日本の借金の状況」https://www.mof.go.jp/zaisei/financial-situation/financial-situation-01.html(2024/5/23)(外部リンク)
[ 3 ]歳入の総額に占める新規国債発行額の割合である。
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