2023年度 東海3県主要集客施設・集客実態調査~新型コロナ5類移行によるイベント再開・規模回復で約6割の施設が対前年度比集客数増団体旅行の回復や”あいち県民の日・あいちウィーク”も好影響~

2024/07/16 加藤 千晶、内田 克哉、服部 愛
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本調査では、東海3県(愛知県、岐阜県、三重県)の主な集客施設における集客実態を把握するため、2023年度(23年4月~24年3月)の集客実態について各施設へアンケート調査を実施した(24年4月~5月)。73施設から回答を得た。

なお、本稿では新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)流行前[ 1 ]との状況比較のため、2019年度、2022年度、2023年度の3カ年度分の集客状況を掲載している。

【結果概要 2

各施設の集客数の状況 【図表1-1、1-2】

  • 「ナガシマリゾート」(三重県桑名市)が、約1,300万人[ 3 ]と18年連続でトップ。団体旅行の回復が集客数増に寄与し、対22年度比で8.3%増となった。一方、対19年度比では16.1%減と、新型コロナ前の水準には戻っていない。
  • 2位は「刈谷ハイウェイオアシス」(愛知県刈谷市)で、約766万人。新型コロナ流行で規模縮小していたイベントの規模回復等によって集客力が増し、対22年度比で4.0%増となった。2023年5月に新型コロナが5類感染症に移行し、国内旅行者の行き先が広がったことに伴う高速道路利用者の立ち寄り増も好影響となったと思われる。対19年度比では5.4%減まで回復し、ほぼ新型コロナ前の水準となった。
  • 3位は約640万人の「中部国際空港セントレア」(愛知県常滑市)で、航空旅客の回復[ 4 ]に伴う送迎利用客の増加が好影響となり、対22年度比で32.9%増となった。新型コロナ流行で休止・規模縮小していたイベントの再開・規模回復等も集客増を後押しした。一方で、対19年度比では24.4%減と、新型コロナ前の水準には戻っておらず、国際線の回復遅れ[ 5 ]に伴い、送迎利用客が完全には戻りきっていないことも影響していると思われる。
  • 4位は約419万人の「河川環境楽園」(岐阜県各務原市)で、施設でのイベント再開が特に好影響となり、対22年度比で1.5%増となった。親水遊具「わんぱくフィールド」の利用規制や、夏期の豪雨に伴う一部駐車場の利用規制の期間があったことが悪影響を及ぼしたものの、対19年度比では9.6%減まで回復した。
  • 5位は約360万人の「バンテリンドーム ナゴヤ(旧 ナゴヤドーム)」(愛知県名古屋市)で、野球日本代表“侍ジャパン”のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)優勝による野球人気の高まりがプロ野球試合への動員に好影響となり、対22年度比で13.6%増となった。一方で、対19年度比では25.5%減と、新型コロナ前の水準には戻っていない。

対22年度比の傾向~約6割の施設で増加~ 【図表2-1、2-2】

  • 23年度の集客数を22年度の集客数と比較すると、73施設[ 6 ]中、42施設(57.5%)で増加し、31施設(42.5%)で減少した。
  • 対22年度比で増加した施設の割合を施設種別で見ると、屋内型施設では、84.2%を占める一方、屋外型施設では28.6%にとどまった。新型コロナの5類感染症移行に伴うイベントの再開や規模回復が施設種別を問わず好影響となったものの、特に屋外型施設では、お盆期間中の台風直撃や猛暑による出控えが悪影響となったと思われる。
  • 増加率1位は、121.6%増の「岡崎公園」(愛知県岡崎市)で、NHK大河ドラマ「どうする家康」の放映に伴い、徳川家康ゆかりの地である同施設内に大河ドラマ館が開館したことが集客増を後押しした。「徳川美術館」(愛知県名古屋市)や「犬山城」(愛知県犬山市)も同ドラマにちなんだ施設として好影響を受け、対22年度比増加率はそれぞれ、31.9%増、21.9%増となった。
  • 増加率2位は、106.1%増の「でんきの科学館」(愛知県名古屋市)で、対19年度比では5.5%増と新型コロナ前の水準を上回った。小学校の社会科見学等、学校行事の回復も好影響となったと思われる。
  • 増加率3位は、69.2%増の「飛騨の里」(岐阜県高山市)で、訪日外国人旅行者に人気の高山エリアに立地する同施設は、訪日外国人旅行者の回復が好影響となった。その他、「トヨタ博物館」(愛知県長久手市)や「名古屋港水族館」(愛知県名古屋市)、「リニア・鉄道館」(愛知県名古屋市)等、新型コロナ前にも訪日外国人旅行者が多く訪れていた施設にも好影響をもたらした。

対19年度比の傾向~約3割の施設で増加~ 【図表3-1、3-2】

  • 23年度の集客数を19年度の集客数と比較すると、71施設[ 7 ]中、20施設(28.2%)で増加し、新型コロナ前の水準を上回った。なお、対19年度比で増加した施設の割合は、21年度調査結果(9.7%[ 8 ])からは増加しているが、22年度調査結果(24.7%)とは同水準である。23年度は、特に屋外型施設で対19年度比増の施設割合が低く(14.3%)、台風や猛暑の天候が影響したと見られる。
  • 増加率1位は、84.1%増の「愛・地球博記念公園」(愛知県長久手市)で、2022年11月に園内に開園した“ジブリパーク”の新エリア開園(「もののけの里」:2023年11月、「魔女の谷」:2024年3月)やイベントの増加が好影響となった。
  • 増加率2位は、68.1%増の「愛知県国際展示場  Aichi Sky Expo」(愛知県常滑市)で、コンサートや大規模イベントの再開等が好影響となった。
  • 増加率3位は41.4%増の「豊川市赤塚山公園」(愛知県豊川市)で、2023年4月のリニューアルオープンにより、遊具の新設や民間活力を導入した飲食物販・交流スペース「あかつかテラス」の設置等が行われ、魅力や話題性が高まったことが特に影響した。

集客数への影響要因について 【図表6-1、6-4】

好影響の要因

  • 23年度は5月に新型コロナが5類感染症に移行されたことに伴い、イベントの再開や規模回復の動きが見られた。約8割(77.3%)の施設が「(新型コロナ流行で休止・規模縮小していた)施設でのイベント再開・規模回復」は集客に好影響をもたらしたと回答した。
  • 約7割(65.2%)の施設が「団体旅行の回復」は集客に好影響をもたらしたと回答しており、特に「岐阜城」(岐阜県岐阜市)や「ナガシマリゾート」(三重県桑名市)等、新型コロナ前に団体旅行利用が多かった施設の集客数増に寄与した。
  • 23年度に愛知県が県政150周年を記念して定めた「あいち県民の日[ 9 ](2023年11月27日)、あいちウィーク[ 10 ](2023年11月21日~27日)」は、約6割(60.3%)の施設が集客に好影響をもたらしたと回答した。好影響と回答した施設38施設のうち、10施設は岐阜県、三重県の施設であり、県域を越えて影響が及んだことが分かる。

悪影響の要因

  • 集客に悪影響となった要因として、約6割(59.4%)の施設が「天候の影響(猛暑・台風等)」を挙げた。特に、23年度は繁忙期であるお盆期間中に台風が直撃した影響も大きかったと考えられる。また、猛暑については、22年度調査結果でも約5割(52.4%)の施設が集客に悪影響をもたらしたと回答しており、例年の猛暑への対策は課題と言える。施設が今後進めたい投資・対策としても、「暑さ対策(ハード面・ソフト面ともに含む)」は「実施予定」と「必要性を感じているが、実施予定はない」の割合が約9割(85.3%)を占め、対策の必要性を感じている施設が多い。
  • 約4割(39.3%)の施設が「物価高」が集客に悪影響をもたらしたと回答した。22年度調査結果(約4割(42.4%))とほぼ同水準であり、円安や原材料費、エネルギーコスト高騰等による社会的な要因も引き続き集客へ影響している。

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1 ] 新型コロナ流行防止のための「新型コロナウイルス対策の特別措置法」は19年度(20年3月)に成立したが、本調査では1回目の緊急事態宣言の発出(20年4月)前の19年度を「新型コロナ前」と設定している。
2 ] 小数点以下第2位を四捨五入した数値を記載しているため、項目別の合計が100%とならない場合がある。
3 ] 「ナガシマリゾート」は年度値(23年4月~24年3月)ではなく、年間値(23年1月~12月)となっている。
4 ] 航空旅客数(通過客を除く)は、対22年度比約52.5%増、対19年度比27.1%減。(出所:中部国際空港セントレア「利用実績」より算出)なお、航空旅客数は本調査では「中部国際空港セントレア」の集客数の集計対象外である。
5 ] 航空機発着回数(旅客便)は、国際線は、19年度:42,154便、22年度:5,871便、23年度:20,190便、国内線は、19年度:63,438便、22年度:55,997便、23年度:55,455便。(出所:中部国際空港セントレア「利用実績」)
6 ] 過年度の数値と比較可能な施設。
7 ] 過年度の数値と比較可能な施設。
8 ] 今年度調査と回答施設・数が異なることを留意されたい(以下、過年度調査は同様)。
9 ] 県民が地域への理解と関心を深め、愛知県への愛着及び県民としての誇りを持つ契機とする日として制定。休み方改革の一環としても位置付けられている。
10 ] 「あいち県民の日」を含む直前一週間(11月21日~27日)を「あいちウィーク」とし、期間中の一日を学校休業日とする「県民の日学校ホリデー」を、県内54市町村全てで実施。親子で楽しめるイベントや、美術館や博物館等の公共施設の入場料割引等が実施された。

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