流通小売業における男女賃金差異に関する経年比較分析~10年間の女性活躍推進の取組成果と今後の課題~
<要旨>
「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下、女性活躍推進法)の改正により、2022年7月以降、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主に対して、男女の賃金差異について情報公表が義務付けられた。流通小売業をはじめ多様な産業が加盟するUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟、以下「UAゼンセン」とする)では、男女共同参画推進に関する課題を明確にし、政策への反映や、加盟組合における男女共同参画アクションプランの推進を目的として、2013年に流通部門を対象とした「ポジティブ・アクション見える化事業に基づく調査」、2022年には全部門を対象とした「女性の活躍・定着に関する実態調査」を実施している。本研究では、UAゼンセンが保有するこれらのデータを活用し、男女間の賃金差異に関する経年比較分析を行うとともに、加盟組合へのインタビューを通じて流通小売業における女性活躍の推進状況について分析を行った。
実態調査及びインタビュー調査からは、女性活躍推進に向けた各企業の施策・取組に関して一定の進展がみられ、流通小売業のいずれの業界においても男女の賃金差異は縮小傾向となっていた。一方で、各業界の業務特性や職場環境などに、女性の活躍を困難とする要因が依然残っていることも確認された。また、各社・各業界のビジネスモデルが時代とともに大きく変化してきており、そうした業界構造の変化が、女性の「採用」「定着(就業継続)」「育成・登用」の方針や課題にも影響を及ぼしていることがうかがえた。こうした実態把握を踏まえ、流通小売業界における、男女の賃金差異解消に向けて残された課題等についても分析・検討を行っている。
各業界の詳細な分析については、本レポートの「3.」で取りまとめており、業界ごとにアンケート調査結果に基づく指標の経年分析及び組合へのインタビュー調査結果を整理した上で、考察にそれぞれ特徴を記載している。また、最後に、調査対象となった各業界の相対比較により、特徴を整理し、流通小売業界共通の課題や変化傾向についても取りまとめている。
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