気候変動抑制に向けたMRV(測定・報告・検証)の国際枠組み構築に関する現状と課題~(1)MRVに関する議論の概要と展望 ~
2011/05/26 森本 高司
気候変動
京都議定書の第一約束期間(2008~2012年)以降の地球温暖化対策に関する次期国際枠組み交渉において近年注目が集まっている重要な論点のひとつに、温室効果ガス排出・吸収量や緩和対策の実施状況等に関する「測定・報告・検証(Measurement, Reporting, Verification: MRV)」がある。本レポートでは、このMRVを巡る議論の経緯と現状を整理するとともに、次期国際枠組みにおけるMRV制度の構築に向けた論点を抽出し、今後の制度設計において考慮すべき視点をまとめた。
【概要】
- 気候変動枠組条約及び京都議定書の下に構築されているMRV制度では、附属書I国(先進国)に比べ、非附属書I国(途上国)の報告頻度及び報告内容等の義務が軽減されている。その結果、途上国からの排出量が正確に把握できない、途上国の情報把握能力が向上しないなどの問題が生じているため、次期国際枠組みにおいては新たなMRV制度の構築が求められている。
- MRVに関する議論は、2007年のバリ行動計画(COP13)で開始され、2009年のコペンハーゲン合意(COP15)、2010年のカンクン合意(COP16)において徐々に具体化されてきている。カンクン合意においては、全締約国に対し、排出・吸収量や緩和行動に関する情報を報告するための隔年報告(2年に一度提出)やそれに対する検証のプロセスが新設されるなど、MRV制度の強化が図られた。ただし、隔年報告における報告内容や検証プロセスの具体的内容など、新たなMRV制度の詳細については未定であり、今後の交渉に委ねられている。
- 今後のMRV制度設計において考慮すべき視点としては、MRV制度を通じて各締約国が緩和行動の促進及び情報把握能力の向上を図っていける仕組みとすること、制度運用に対する人的・作業的負荷を勘案した上で効率的な制度設計を目指すこと、これまで不十分であった途上国に対する支援に関する情報の透明性向上を目指すとともに、途上国が報告する情報の質と支援との関係性を構築し、報告活動に対するインセンティブを設定すること、が挙げられる。
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